
「大学は楽しいっていうけれど、それって本当?」
25歳未満の人のおよそ半数が、大学もしくは短期大学のような同等レベルの学校への進学を選択する時代、大学受験を考える人は多いはずです。しかし、自分が楽しい大学生活を送れるかどうかわからず、進学を迷ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。
知り合いから「大学がつまらない」「大学が楽しいなんて嘘」という話を聞いて不安になったり、将来就きたい仕事が決まらず、大学に進学すべきかどうか悩んでいたりする人もいるかもしれません。
この記事では、いくつかの私立大学に職員として勤めた経験がある筆者が、大学の中から見た「進学するメリット」や、「大学進学に向いている人」について解説します。
これから大学を受験する現役生や、Re受験生、あるいは大学への進学を迷っている人が、前向きに進路を考えることのできるヒントを紹介します。ぜひ、参考にしてください。
参考:中央教育審議会総会(第137回)会議資料・参考資料集 資料1-3 令和5年9月25日(大学等進学者数に関するデータ 関係)
大学って何が楽しいの?

「大学は楽しい!」という人は、何がそんなに楽しいのでしょう。
ここでは、高校までとの違いに注目しながら、大学の楽しさを5つのポイントから詳しく解説します。
なお、大学と高校の違いについて、以下のような記事もあります。あわせて読んでみてください。
大学と高校の違いとは?大学の講義や生活面での違いも徹底解説!
専門的な「講義」を受けられる
大学で授業を担当する先生は、それぞれの分野の専門家です。
一般的に、大学では授業を「講義」と呼びます。大学の講義は、担当の先生(教授、准教授、講師)が独自に作成した「シラバス」という授業計画書にしたがって進みます。つまり全ての授業が、その先生にしか教わることのできないオリジナルというわけです。
そして、大学では一部の必修科目(語学、情報系の講義など、必ず受けなければならない講義)を除けば、時間割の大部分を自分の興味のある講義で固めることができます。
内容も、高校までのように暗記が重視されることは少なく、自分で調べた内容を発表する「演習」や、「実験」「実習」など実践的な講義もあります。大学の専門的な講義で手に入れた経験は、将来の進路を考える助けにもなることでしょう。
少人数のゼミで学ぶ
高校生、Re受験生の中には、「ゼミ」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
大人数で行われることもある講義と違って、ゼミでは基本的に10名前後の小クラスで、各分野の専門的な研究テーマについて学びます。学ぶといっても、ただ単に教員の話を聞くだけでなく、自分で研究を進めてその成果を発表したり、学生同士や教員とディスカッションしたりという双方向性が重視されます。
ゼミを通して、研究のためのスキルだけでなく、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力なども身につけることができるでしょう。また、卒業年度に近付くと、ゼミで卒業論文や卒業研究に結びつく内容についての学びを進める場合もあります。
ゼミでは、学生同士で議論しながら研究を進めることはもちろん、親睦を深めるために食事に行ったり、ゼミ旅行を企画したりすることがあります。また、ゼミのメンバーや指導教員と、大学を卒業した後も良い関係が続く人もいます。
サークルや部活動の仲間ができる
さまざまなサークルや部活動が選べるのも、大学生活の魅力です。大学には、高校までに見られない珍しい部活やサークルがあることも少なくありません。
筆者が学生時代に暮らしていた関西の大学では、野球部やアメリカンフットボール部など、本気でスポーツに打ち込む部活動から、漫画研究会、パズル研究会、カレー部など、独自の活動をするさまざまなサークルがありました。
また、同じスポーツ系でも、「他大学との対抗試合に出場して高みを目指したい場合には“部”、ほどよく楽しみながら学生同士の親睦を深めたい場合には“サークル”」というような観点で選ぶこともできます。
サークルや部活への所属を強制されるようなことはなく、自分の性格やスタンスに合わせて選ぶことができるので、無理なく活動を続けることができますね。
普段の授業では顔を合わせることのない他学部、他学科の学生と友達になれることも、サークルや部活動に所属するメリットです。また、大学間で交流のある部活動や、複数の大学の学生が所属する「インカレサークル」と呼ばれるものもあり、そうしたものに所属すれば交友の幅をさらに広げることもできるでしょう。
授業外の時間を自由に使える
大学の外の話も、少しだけさせてください。
「大学の楽しさを語る記事なのに、大学の外の話?」と思うかもしれません。でも、授業や部活・サークル以外の時間も楽しめるのが、大学生のよいところだと思うのです。
大学では、各学年のカリキュラムや、卒業のために必要な単位を修得できる範囲で、授業を入れない「空きコマ」を個人の裁量で設定することができます。この「空きコマ」や、講義が終わってからの時間は、貴重な自由時間です。
講義の予習復習はもちろん、部活動やサークルの自主練習に打ち込んでもよし、友達と談笑してもよし、大学周辺を散歩してもよし、アルバイトにあててもよいでしょう。
勉強と自由時間のメリハリを意識すれば、より大学生活が楽しいものにできるはずです。
長期休暇
授業期間外の長期休暇も、大学生ならではのものです。
大学の年間スケジュールには、2学期制、3学期制、4学期(クォーター)制があり、いずれの場合にも長期休暇があります。
全国的には、春・秋の2学期制をとる大学が一番多いですが、近年は4学期(クォーター)制を導入する大学も増えています。
4学期(クォーター)制のメリットとしては、1科目の単位を約2ヶ月という短期間で修得できる点や、海外の大学への留学がしやすいという点が挙げられます。
以下に、2学期制、3学期制、4学期(クォーター)制をとる大学の年間スケジュールの一例を示しました。
大学年間スケジュールの一例

同じ学期制をとる大学の間でも、授業開始・終了の日程は少しずつ異なりますが、おおよそは上記のようなスケジュールです。
各学期の終了から次の学期の開始までが、授業のない期間になります。どの学期制を取るにせよ、夏季にはおよそ2ヶ月ほど授業の行われない期間があります。
この長期休暇を機会に、ちょっとした授業の合間では体験できない、長いスパンの計画を立てるのもよいかもしれません。長期休暇の計画もまた、日々の大学生活のモチベーションを上げてくれるでしょう。
参考:大学に導入が進む「クォーター制」とは ?メリットや導入大学を紹介|THE 日本大学ランキング
大学進学のメリット

大学で学ぶことは楽しいだけでなく、さまざまなメリットがあります。ここでは筆者が考える大学進学のメリットを3点、挙げたいと思います。
将来の選択肢が広がる
まず確実にいえることは、将来の選択肢が広がるという点です。
具体的には、大学を卒業することが免許・資格取得の条件となる職業を選べることが挙げられるでしょう。
文系、理系共通だと、小・中学校、高等学校の教員がそれにあたります。また、医師、薬剤師なども、国家試験に合格するほかに大学を卒業することが必要です。
大卒が必須でなくとも、大学で講義を履修し、資格を取得できるものもあります。例えば、図書館司書や博物館学芸員、看護師、建築士などです。
資格取得の観点から大学を選ぶのもよいでしょう。
一般企業や地方公務員でも、大学を卒業した人を優先的に採用する企業や採用枠があります。
将来の選択肢が広がることが大学進学の大きなメリットであることを覚えておきましょう。
参考:じゅけらぼ予備校「大卒でとれる資格一覧、文系学部・理系学部の大学卒業後に取得できる資格」
将来について考える時間が持てる
就きたい仕事がまだイメージできない、という人にも、大学に進学するメリットはあると思います。
というより、これまで多くの学生と接してきた筆者から見て、大学に入学した時点で将来のビジョンがしっかりと持てている人のほうがむしろ少数派です。初めのうちは迷っていても、大学で学び、周囲の人とかかわるうちに進路のイメージを固めて、卒業までに就職先を決める学生はたくさんいます。
ですから、受験の時点で志望校を無理に仕事に結びつける必要はないのです。
それでも、卒業後の職業がイメージしにくい学科に進もうとする場合には、将来が不安になることがあるかもしれません。それならば、興味のある大学のホームページや、毎年発行される大学案内に掲載されている進路、就職情報を確認してみましょう。
多くの大学が受験生向けの情報として、近年の卒業生の就職先や、卒業生が就いた職種の割合などのデータを公開しています。それを確認することで、一見して進路のイメージしにくい学部学科にも、多くの道が開けていることがわかるでしょう。
自分に合った人間関係を作ることができる
大学で得られるものは、将来の仕事だけではありません。
よく「大学では一生の友達ができる!」という話を聞きます。そういった実感を持っている人は多いようです。
筆者としてはもう少し幅広い見方をしていて、「自分に合った人間関係を作ることができる」と考えています。
大学では、興味のある分野や、学力など、自分と共通するものを持つ人がある程度集まります。つまり、大学に入学する前よりも、話の合う友人を見つけやすくなる可能性は高いといえるでしょう。そこで、大学進学前とは違う友人関係を広げ、それこそ一生の友達を作ることができるかもしれません。
学部学科だけでなく、部活動やサークル、アルバイトなど、複数のコミュニティで人間関係を作れることも、大学進学の大きなメリットといえます。
また、「友達は少しだけでいい」「一人で過ごすのが好き」という人にとっても、大学は過ごしやすい環境になり得ます。
先に述べたように、大学では自分の興味にしたがって履修する講義を決めるので、一部の必修科目を除いて、人によって出席する講義が異なります。だから、クラス全員がほぼ同じ教室で授業を受ける高校までのように、常に誰かと一緒に行動する必要は必ずしもないのです。
大学進学が必ずしも必要でない人

さて、ここまでは大学の楽しい面、進学するメリットなどを紹介してきました。
しかし、全ての人が絶対に大学進学をしなければいけないというわけではありません。ここでは、大学進学が必ずしも必要ではない、と思われるタイプの人について3つの観点から見ていきます。
仕事に就く意欲と準備ができている人
例えば、高校を卒業する時点ですでに希望する職業がはっきりと決まっていて、その仕事に就くために大卒の資格が必須でない場合には、無理に大学に進む必要はないでしょう。
すでに条件を満たしているのならば、卒業後そのままその職場に応募して、経験を積めばよいですし、専門学校などで技術を学ぶほうが役に立つのであれば、そちらに進めばよいわけです。
自分の希望を無理に曲げて大学に入学しても、途中で辛くなってしまうことがあるかもしれません。
それでも「いつか大卒であることが必要になるのでは?」という心配があるのはもっともです。そんな人に知っておいていただきたいことがあります。
大学には何歳になっても、受験資格があって試験に合格すれば入学することができます。また、通信制大学や、夜間に授業が開講される大学では、社会人が働きながら学べる環境が用意されています。さらに、一般的な試験による大学入試とは別に、社会人を考慮した「社会人選抜」が行われている大学も少なくありません。
むしろ現在、文部科学省の政策によって、社会人選抜を行う大学は増えています。
たとえば高校卒業後すぐに就職したとしても、「大学で学びたい」「大卒の資格がほしい」と思ったタイミングで大学進学を検討しやすくなってきています。
参考:社会人入試とは?
参考:社会人でも大学に入学できる?知っておきたい受験の基礎知識
好きなことを自分のペースで学びたい人
前に、大学では自分の興味のある講義を自由に選択できると述べました。ですから、大学ではある程度、好きなことを自分のペースで学ぶことができる場所です。
ここで「ある程度」と言ったのは、そうはいっても多少の制約があるからです。
大学では興味のある分野を中心に、語学や情報科目、専門に関係する他の分野の講義も履修しなければなりません。
もちろんこれは専門分野の学びにも役立つことです。しかし、「本当に好きなことだけ学びたい!」という人ならば、このようなシステムを苦痛に感じることがあるでしょう。
大学で学ぶにしても、専門分野を極めるためには自学自習の時間が必要です。それならばはじめから大学に行かず、全て独学で好きなことを突き詰める、という選択肢はもちろんあり得ます。
また、大卒が必須でない資格が必要な職業を目指す場合、単に資格の取得だけのために勉強したいのであれば、独学でも差し支えません。
先の例と同じように、興味のある分野以外の勉強が苦手と感じるならば、大学に行かずに資格の取得だけを目指すという選択肢も、当然ありでしょう。
参考:文部科学省、大学設置基準等、第19条の2(教育課程の編成方針)
とにかく勉強が嫌い!という人
たまに「とにかく勉強が苦痛で嫌い!」という学生もいます。人には得手不得手がありますから、それも不思議ではありません。
そういう人は無理をして大学に行く必要はありません。むしろ大学に行くことで、体や心の調子を崩してしまうことがあるかもしれません。
大丈夫です。大学に行かなくても人生の選択肢はあります。
それに、先ほど述べたように、大学は、本人が「学びたい」と思ったタイミングで進学を検討することができます。ですから、嫌がる人に無理に大学を受験させる必要はないのです。
2023年度には大学・短期大学の学生の2%が「進路変更」や「大学への不適応」などを理由に中途退学しています。
大学を途中で辞めてしまうことも、決して無駄ではないと思います。ですが、大学関係者としても、学生本人が意に沿わない入学をして苦しむことはできるだけ避けたいものです。
参考:文部科学省「令和5年度学生の中途退学者・休学者の統計」
なぜ楽しめない人がいるの?

「2023年度は大学生の2%が退学している」というデータを紹介しました。
大学に勤めていると、いつの間にか大学に出て来なくなったり、退学してしまったりする学生は必ずいます。
突然の体調不良や家庭の都合などのやむを得ない事情は除いて、退学を選んだのは、何らかの理由で大学生活を楽しむことができなかった人なのだと思います。
なぜ、大学を楽しめない人がいるのでしょうか。考えられる理由について考えてみます。
入学した大学もしくは学部・学科が合わなかった
低学年での退学でよくあるケースが、入学した大学もしくは学部・学科とのミスマッチです。入学してから講義を受け始めて「自分が学びたかった内容と違う」、「自分がなりたかった職業に就けそうもない」と思うことは、残念ながら時々あります。
ここで将来やりたいことや、大学で学べる内容が問題になる場合には、受験の前のリサーチで、入学後のミスマッチを防ぐことができるかもしれません。
毎年発行される各大学の「大学案内」や、ホームページ上の情報、多くの大学が一般に公開している講義の「シラバス」などから、その大学で本当に自分が学びたい分野を学べるのか、事前に調べてみましょう。
受験生や一般の人に向けた公開講座を行っている大学もあります。興味のある大学、分野の講義があれば、足を運んでみるのも参考になるかもしれません。
また、オープンキャンパスでは大学だけでなく周辺地域の雰囲気などを知るために、一度は参加しておくとよいと思います。すでに述べたように、大学生活は、授業以外の時間も大切だからです。
Re受験生の志望校の決め方については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
人間関係でつまずいてしまった
大学生活を楽しめない理由として、もう一つ考えられるのは、人間関係をうまく作ることができなかった、というケースです。
たまたま入学した学部学科で気の合う人が見つからないこともあるでしょう。友達ができないまま時間が過ぎ、焦ってしまう人もいるようです。
ただ、大学自体とのミスマッチをそれほど感じていないのならば、それを理由に退学を選んでしまうのはあまりにもったいないと思います。
前述したとおり、大学では学部学科だけでなく、部活・サークル、アルバイトなど、複数のコミュニティを作ることができます。うまくいかないな、と思ったら、大学に所属したまま新しいコミュニティを探すこともできます。もちろん、一人で過ごしたってかまわないのです。
大学時代は、人間関係を模索するのにちょうどよい時期です。一度のつまずきで必要以上に落ち込む必要はありません。
人を頼ることが苦手
上の2点に関連して、「講義について行けない」「わからないことを尋ねたり、悩みを打ち明けたりする相手がいない」などの理由で、大学を休みがちになる学生も目立ちます。
このような学生に共通する特徴をひとつ挙げるとすれば、「人をうまく頼ることができない」点が考えられると思います。
そして、多くの大学では近年、悩みを抱える学生をサポートする取り組みを進めています。
現在は、学生の心身のサポートのための相談窓口を設けている大学がほとんどですし、学生個々人に対し「アドバイザー」となる教員を決めている大学もあります。
大学生活の悩みは、焦らずに時間をかけることで解消できるかもしれません。すぐに退学を選ぶ前に、大学の窓口に頼って客観的な意見をもらうことも大切です。
そして、「大学に入ってもつまずいてしまうのでは?」と不安に思っている受験生、Re受験生のみなさんも、いざとなったら頼れる場所があることを知っていて損はないでしょう。
まとめ
ここまで、大学生活の楽しさや進学のメリット、大学進学が必ずしも必要でない人、大学生活を楽しめない理由などについて解説してきました。
色々と書いてきましたが、大学を楽しめるかどうかはその人次第です。そして、いざ大学に入学した時、予想と違うことは多かれ少なかれ起こり得ます。この記事では、予想と違う事態に直面したときの対処法についても、できるかぎりご紹介したつもりです。
まずは前向きに、自分が大学に進学したいかどうか、そして大学進学後どのように活動していくかをじっくり考えてみてください。
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