
明確な将来の進路のイメージを持つのが難しいと感じている高校生・受験生はたくさんいます。
入りたい大学を選べたとしても、「自分の将来のためにどの学部・学科で勉強したらいいかわからない」という状態になってしまうケースも珍しくないのではないでしょうか。
そんな大学入学前に明確に学部・学科を定めることが難しいという人のために、大学に入学した後でも別の学部に移動できる大学があることをご存知でしょうか?
本記事では、大学に入学した後でも学ぶ学問を変更できる、転部・転科について徹底解説します。
転部・転科できる大学も紹介しているので、気になる高校生・受験生はぜひ最後までご覧ください。
転部・転科ってなに?

転部とは在席している学部から他の学部に転籍することを指します。
また、転科とは在席している学科から他の学科に転籍することを指します。
大学に入学した際には、必ずどこかの学部・学科に所属しなければなりません。そのため、入学時に所属した学部・学科の内容と、自分が将来やりたいことの方向性がリンクしない、またはリンクしなくなるという悩みを持つ学生も一定数います。
転部・転科制度は、そのような今在籍している学部・学科ではない別の分野の学問を学びたい在学生に向けた救済措置です。
大学によって転部・転科できる条件や範囲が異なるので注意が必要です。
参考:大学進学後に進路変更したいときどうする?転部・転科とは?予備校で対策するための注意点も解説
参考:大学入学後に進路変更したいときどうする?転部や転科について解説
転部・転科のメリット

転部・転科は、大学生活の中でも大きな決断になるので、転部・転科してもたらされるメリットが自分にとって有意義なものであるかどうか考えなければなりません。
しかし、大学に入学する前では大学生活や学部・学科における勉強の雰囲気をつかむのが難しいため、転部・転科にどのようなメリットがあるかわからない人も多いでしょう。
ここでは、転部・転科のメリットを3つ解説します。
自分の将来に関わる大切なポイントになるので、学部・学科選びに迷っている高校生・受験生はチェックすることをおすすめします。
参考:大学進学してから進路変更が可能!?〜理系から文系の道へ〜【先輩体験談】(後編)
参考:別の学部に転部・転科するには? 学部変更の理由で多いものは?
将来のやりたいことに役立つ学問を学べる
大学の委員会・サークル活動やアルバイト経験などの社会での経験を通して、それまで考えていた進路より、自分にぴったりな進路を見つけられる大学生は多いです。
そのため、他の学部・学科の方が大学卒業後にやりたいことの分野に近く、今在籍している学部・学科にいたままでは、貴重な学生の期間を無駄にしてしまうケースに陥ってしまうことも少なくありません。
転部・転科を利用することで、自分の将来図がより明確な状態で学部や学科を選べるので、将来のやりたいことに役立つことを学べる傾向が強いです。
モチベーションがあがるきっかけになる
将来やりたいことと関係が薄い分野の学部・学科を選んでしまうと、モチベーションが低下し、貴重な学生の期間をだらだらと過ごしてしまう要因になりかねません。
さらに、モチベーションの低下は大学にいる意味を曖昧にしてしまい、せっかく労力と費用をかけて入学した大学を退学してしまいたくなる人もなかには出てくるでしょう。
大学に入学するために費やした費用や時間を無駄にしないためにも、転部・転科を利用して将来やりたいことと関係している分野を学習できた方が、モチベーションが保ちやすく、有意義な学生生活を送りやすいといえるでしょう。
将来やりたいことに役立つ人脈を作れる
大学における友人や教授とのつながりは、社会に出たあとも続き、仕事などで役に立つこともあります。
大学はより自分の将来に関係のある学問を学べる場であり、研究室や同じ団体に所属していた友人や教授との関係が、卒業後の仕事や将来やりたいことに役立つことも少なくないのです。
そのため、転部・転科を利用して将来やりたいことと関係している分野を学習した方が、大学でできた友人や教授などの人脈が将来やりたいことに役立つ可能性が高いです。
転部・転科のデメリット

転部・転科には将来やりたいことにつながるメリットが多い反面、学生生活に大きな支障をきたしてしまうデメリットもあります。
転部・転科のデメリットを把握していないと、留年してしまったり、最悪の場合では卒業できずに退学を余儀なくされるケースに陥ってしまいます。
ここでは、転部・転科のデメリットを3つ解説します。
後悔のない転部・転科を実現するためにも、以下のデメリットを把握して、大学生活のスケジュールを計画してみるとよいでしょう。
参考:大学入学後に進路変更したいときどうする?転部や転科について解説
参考:別の学部に転部・転科するには? 学部変更の理由で多いものは?
留年してしまうリスクが高まる
転部・転科をしてしまうと、大学を卒業するために必要な必修科目が変化するため、留年してしまうリスクが高まります。
特に転部・転科の判断を遅い段階でしてしまうと1、2年生で取得した必修単位が卒業条件だと認められず、移動先の学部・学科の必修単位を取り直すはめになることも珍しくありません。
そもそも、3年生から4年生になるタイミングでの転部・転科を大学側が認めてくれない場合が多いです。
もし大学3年生で転部・転科を考えている人は、春学期などの早めの段階から、転部・転科できるかどうか、教授や大学の職員に聞いてみるとよいでしょう。
参考:大学3年生で転学部・転学科をするとどうなる?卒業までの道のりについて
移動先の学部や学科によっては学費が高くなる
移動先の学部や学科によっては学費が高くなる点も転部・転科のデメリットだといえるでしょう。
特に以下のような転部・転科のパターンは学費が高くなる傾向が強いです。
- 実習や実験が多い学部・学科に転部・転科するパターン
- 留学が卒業要件に含まれている学部・学科に転部・転科するパターン
- 文系学部から理学部系の学部・学科に転部・転科するパターン
転部・転科先の学費が高くなると、経済的負担もその分増えてしまうため、奨学金制度を利用するなど、経済状況に影響を及ぼす可能性があります。
業界によっては学部や学科がそこまで考慮されない傾向が強い
就職したい業界が明確になると、業界と関係深い分野への転部・転科をしたい大学生は多いでしょう。
しかし、研究員や技術職は学んだ学部や学科が重要になる一方で、サービス業などの業界は出身学部・学科よりも人柄のようなものを重視することも多く、転部・転科しようが就活において、または就職後大差がないことも珍しくありません。
学部や学科で学んできたことももちろん大切ですが、学んできた内容よりも就活での課題への取り組み方やチームプレイを重視する人柄の方を重視する業界も多くあります。
就職関係の目的を理由に転部・転科を検討している場合は、希望する業界にとって所属している学部・学科の重要度がどれくらい高いか調べてから、判断することをおすすめします。
転部・転科するには?

転部・転科する方法や条件は大学によってさまざまです。
一般的に転部・転科するためには、複数のステップをクリアしなければなりません。
ここでは、転部・転科するための行動を4つのステップに分けて解説します。
細かな条件や内容は大学によって異なるので、以下のステップで大まかなスケジュールを把握し、大学の転部・転科する条件に合わせてスケジュールを調整することをおすすめします。
引用:大学入学後に進路変更したいときどうする?転部や転科について解説
学生課もしくは公式ホームページで転部・転科する条件を確認する
転部・転科する条件は、大学によってさまざまです。
そのため、まずは大学の学生課もしくは公式ホームページで転部・転科する条件を確認することが大切です。
条件を確認する際には、以下のポイントに注意するよう心がけましょう。
- 転部・転科するために必要な履修条件
- 必要な費用
- 転部・転科先の必修科目
- 転部・転科に必要な試験の内容や申請に必要な書類
申請に必要な書類を記入する
一般的に転部・転科する場合、複数の書類の提出を求められます。
例えば、2023年における早稲田大学の転部・転科には以下の書類の提出が必要になっています。
- 転部願
- 転部志願者記録
- 写真
転部・転科の受付には期限が設けられていることがほとんどです。
申請に必要な書類を書く際には、提出期限に注意するよう心がけましょう。
試験・面接を受ける
転部・転科する大学によっては、試験や面接に合格しないと転部・転科が認められないこともあります。
試験内容は大学や転部・転科する分野によって異なりますが、小論文や転籍したい先の学科で必修となる科目に関する知識を問われるケースが多いです。
面接では、転部・転科する理由を聞かれることがほとんどです。目的や転部・転科する意志を整理しておき、論理的にわかりやすく面接官に話せるよう準備しておきましょう。
正式な手続きを実施する
試験・面接に合格したら、転部・転科するための正式な手続きを実施します。
大学側から転部・転科するために必要な書類が渡されるので、漏れがないように記入してから提出しましょう。
転部・転科できる大学

転部・転科できるかどうかは大学によって異なるので、志望する大学に転部・転科制度が適用されているかどうか調べることは非常に重要です。
ここでは、転部・転科制度が適用されている大学を6つ紹介します。
大学ごとに転部・転科するために必要な要件や手順も解説しているので、転部・転科の具体的な方法を知りたい方は参考にしてみてください。
参考:大学進学後に進路変更したいときどうする?転部・転科とは?予備校で対策するための注意点も解説
東京大学
東京大学は日本でも屈指の偏差値を誇る大学で、グローバルリーダープログラムなどさまざまな教育プログラムが実施されています。
東京大学では大学入学後に学部を決められる「Late specialization」を採用しています。そのため、大学生になって視野が広がってから、専攻して学ぶ学部・学科を選ぶことができます。
東京大学の他にも入学後に学部を決められる大学は複数あるので、詳しく知りたい人は以下の記事を確認してみてください。
また、専攻学部・学科を決めたあと(後期課程)でも、条件を満たせば転部・転科することができます。転部・転科するためには、在学する学部の学部長もしくは大学の学長の許可証を、願書とともに提出しなければなりません。
参考:東京大学学部通則
日本大学
日本大学は1889年に創立された大学で、「自主創造」の力を持つ人材育成を目指す教育プログラムが実施されています。
日本大学で転部・転科するためには、転部・転科先の転部試験・転籍試験に合格しなければなりません。
なお、学部や学科によって試験内容が異なるので、公式ホームページで各学部・学科の試験要項を確認することをおすすめします。
参考:転部・転籍・転科試験情報
参考:日本大学の教育
神奈川大学
神奈川大学は1928年に創立された大学で、ゼミ活動が非常に充実している強みを持っています。
神奈川大学で転部・転科するためには、書類審査(学期の成績及び志望動機)と面接・口述試験に合格しなければなりません。
情報学部の先端情報領域プログラムでは3年次の募集がされていないように、転部・転科先の学部・学科によっては、対象の学年に制限があるので注意が必要です。
参考:学園のあゆみと理念
東京理科大学
東京理科大学は1881年に創立された大学で、データサイエンス教育プログラムを取り入れている教育体制を構築している特徴があります。
東京理科大学で転部・転科するためには、書類選考、筆記試験、面接に合格しなければなりません。
学部や学科によって試験内容が異なるので、公式ホームページで各学部・学科の試験要項を確認することをおすすめします。
参考:データサイエンス教育
青山学院大学
青山学院大学は「自ら問題を発見し解決する知恵と力をもつ人材を育成する」という理念を掲げている、国内でも知名度の高い大学になります。
青山学院大学でも転部・転科するためには、転部・転科先の転部試験・転籍試験に合格しなければなりません。
要項に各学部の受け入れ方針が記載されています。
立教大学
立教大学は新しいグローバルリーダーの育成を目指す、国内でも知名度の高い大学になります。
立教大学でも転部・転科するためには、転部・転科先の転部試験・転籍試験に合格しなければなりません。
転部・転科する学部・学科によって、受け付け可能かどうかだけでなく受け付け可能な学年も異なるので、条件を満たしているかどうかしっかりと確認する必要があります。
参考:立教大学の教育の特長
まとめ
本記事では、大学に入学した後でも学ぶ学問を変更できる、転部・転科について解説しました。
転部・転科は大学によって条件や手順が大きく異なるだけでなく、その年の学部のキャパシティ状況によっても大きく変わります。
より自分の将来設計図を明確にした状態で、学部・学科を選びなおせるメリットがある反面、取得単位や費用が増加するリスクも高まるので、慎重な判断を心がける必要があるでしょう。
また、東京大学では入学後に専門を決める方式「Late Specialization」があるように、大学によっては転部・転科に近いシステムを取り入れている場合もあります。
まだ自分の学びたい学部や学科が決まっていない高校生・受験生は、入学後に学部や学科を選びなおせるシステムを導入しているかどうかも、大学選びの判断基準に加えてみてはいかがでしょうか。
参考:前期課程の概要
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