
志望校を選ぶとき、あるいは就職活動を始めるとき、ふと「学歴は就職に関係あるの?」という疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、学歴だけで就職が決まることはありませんが、関係はしてきます。
どのような場合にどのくらい重要視されるのか、学歴と就職の関係について具体的に説明していきます。
学歴と就職って関係あるの?

学歴と就職には、関係があるといえるのが現実です。一定以上の学歴を持つ学生のみを選考の対象としている企業は少なくありません。
では、どうして就職は学歴が関係してくるのでしょうか。その理由について説明していきます。
採用活動を効率化するため
一つ目の理由は、企業側が採用活動を効率化するために、学生の能力を判断する一つの要素として学歴を用いることがあるためです。
有名大学を出ていなくても高い能力を秘めている学生はいるでしょうが、それでも、高学歴の学生の中から採用をしたほうが「はずれが少ない」と考える傾向があるようです。
偏差値の高い大学に合格している事実は、少なくとも大学受験においては「目標のために努力し、成果を出せた実績がある」ということの証明になっています。
そのため、短期間で多数の応募者の合否を決めなければいけない人気企業などには、一定の基準以下の学歴の応募者は書類選考の段階で一律不合格になる、いわゆる「学歴フィルター」が存在することがあるのです。
実際、とある企業の人事・採用担当者は「エントリーが殺到する人気企業の人事だと、応募学生全員を丁寧に見ていったら期限内に採用活動を終えることはできません。少しでも業務効率をあげるために、企業での勤務経験がないという特性を持つ日本学生の採用については、“学歴による優秀である可能性の高さ”にすがって『学歴フィルター』をかけ、母集団(志望者)を絞った採用活動を行う」(引用元:就活「学歴フィルター」がなくならない真因 人事担当者が語る、新卒採用の行動心理 | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン)と話しています。
リクルーター面接があるため
二つ目の理由は、新卒の就活には「リクルーター面接」という制度が存在するためです。
リクルーター面接とは、就活生に同じ大学出身のOB・OG社員がリクルーター(採用担当)としてコンタクトを取り、一般選考とは別のルートで選考を進めていく制度です。
リクルーター面談では、先輩社員と一対一で話せる場が設けられます。面接の前段階としてさらなる情報収集ができるだけでなく、リクルーターの判断によって、一次面接が免除になった・早期内定につながったという例もあります。
リクルーターは自分の出身大学と同じ大学に在籍する学生に声をかけますから、当然、声をかけられる学生の学歴は偏ります。リクルーターが高学歴であれば声をかけられる学生も高学歴になり、そうして採用され入社した学生が次のリクルーターとしてまた高学歴の学生に声をかけ……という流れで、自然と高学歴の学生だけが積極的な採用の対象になるのです。
そもそも最初から一定以上の学歴を持つ学生のみを採用ターゲットとして見ている、というパターンがあるのです。
ビザが降りやすいため
三つ目の理由は、高学歴だと就労ビザが降りやすいことがあるためです。
基本的には、卒業した大学のランクに応じてビザの取りやすさが変わることはなく、四年制大学を卒業したという経歴はみな「大卒」としてひとくくりに扱われると思っていてよいでしょう。
しかし、高卒と大卒、大卒(学士号)と院卒(修士号・博士号)ではビザの取りやすさは違ってきます。高卒では降りなかったビザが大卒では降りたり、大卒では審査が難航していたビザが院卒ではすぐ降りたり、といったことは起こりえます。海外で働きたいのであれば、院まで進むことを検討してみてもよいかもしれません。
ビザに大学のランクが影響することは基本的にない、と述べましたが、そうではない国も存在します。
イギリスでは、国内外のトップクラスの大学を過去5年以内に卒業した個人に対し、通常とは異なる特別な条件・審査のもとで就労ビザを発行する制度を実施しています。これは優秀な人材をイギリスに引き寄せるための移民制度の一環で、日本では京都大学と東京大学の2校が対象となっています。
こうした制度は他国でも急に施行されるかもしれませんので、就職先として海外で働くことを考えている方は、ビザと学歴の関係について頭に入れておいてもよいかもしれません。
参考:大企業への就職に学歴は求められるのか?学歴フィルターを通り抜けて内定を貰う秘訣|未経験転職ならリクらく
参考:就職に学歴は関係ある?就活で企業が重視するポイントを紹介
参考:リクルーター面談の実態は? おすすめ逆質問30選と必須準備を解説 | PORTキャリア
参考:就活中によく聞くリクルーター!うまく活用して第一志望から内定を獲得しよう|就活市場就活中によく聞くリクルーター!うまく活用して第一志望から内定を獲得しよう|就活市場
参考:世界トップ大学の卒業生対象、英ビザ取得で新制度 日本からは2校 – BBCニュース
学歴を重視する業界・企業・職種

では、応募者を判断する材料として学歴を重視しているのは、どんな業界・企業・職種なのでしょうか。
具体的に例を挙げて見ていきましょう。
コンサルティング業界
コンサルティング業界における学歴フィルターは、他の業界よりも厳しい傾向があります。人気のある業界のため多くの応募者をスピーディーに選抜していく必要があることと、学歴が入社後も一つの武器となりうることが理由として挙げられます。
コンサルに必要とされるのは、論理的思考力や入社後も勉強を続ける力です。勉強ができることとこれらの能力があることはイコールではありませんが、大きく関係していることは確かでしょう。そのため、高学歴の学生はコンサルとしても活躍する能力がある可能性が高いと判断され、選考を通過しやすいです。
また、コンサルの仕事は経営者などの地位の高い人々にアドバイスをすることです。中には自分より学歴の低いコンサルからアドバイスを受けることに抵抗を覚える人もいます。そのため、高学歴な人材を揃えることはコンサルファームにとっても強みの一つとなりうるのです。
参考:【採用担当のホンネ】学歴がないと無理?コンサルタントに転職するという選択肢 – コロニー株式会社
大手企業(歴史ある企業)
知名度の高い大手企業には応募者が殺到します。そのため、採用活動を効率化すべく学歴を判断基準の一つとすることがあるでしょう。
加えて、歴史ある企業の人事担当者や経営者には、「高学歴=優秀」という学歴偏重の考え方が未だに根付いている傾向があります。また企業によっては、出身大学に基づいて形成される「学閥」が存在し、高学歴と呼ばれる大学の出身者同士で強い仲間意識を持っていることもあります。これらの影響で、歴史ある企業では他の企業に比べて採用の際に学歴が重要視される企業の割合が大きいです。
参考:大企業への就職に学歴は求められるのか?学歴フィルターを通り抜けて内定を貰う秘訣|未経験転職ならリクらく
参考:就職に学歴は関係ある?就活で企業が重視するポイントを紹介
仕事のレベルが高い職種
学校の勉強が苦手な人は向いていないタイプの高度な仕事を扱う職種では、学歴が重視されることがあります。投資銀行や証券会社などがこれに当たります。
これらの職種では、毎日たくさんの数字をミスなく処理したり、常に論理的な思考でお客様に対応したりすること、さらには移り変わる市場を読み分析する能力が求められます。
実績がない学生を対象とする新卒採用の場においては、これらの能力を判断する材料として、数学や国語といった教科の学力が一定以上ある、つまりよい大学に受かっている「高学歴」であることが重視されるのです。
参考:【保存版】学歴フィルターがある企業・ない企業一覧! – 就活攻略論|日本最大規模の就活専門ブログ【2300万PV突破】
学歴をあまり重視しない業界・企業・職種

反対に、応募者を判断する材料として学歴を重視していないのは、どのような業界・企業・職種なのでしょうか。
こちらも具体的に例を挙げて見ていきましょう。
ベンチャー企業
ベンチャー企業とは、一般的に新しい技術やビジネスモデルからなる事業を展開する企業のことです。大手企業との違いとしては、設立からあまり年数が経っていないことが多く、企業として未だ成長過程にあることがほとんどです。
ベンチャー企業は、大手企業と比べると学歴を重視しない企業が圧倒的に多いです。そもそも経営者自身が高卒や大学中退で起業したというような経歴のところは従業員にもそれほど学歴を求めない傾向がありますし、書類選考の時点で採用効率を意識するほど応募者が多くはないことが多いです。
従業員数の少ないベンチャー企業においては、新卒であっても即戦力になるような人材が求められます。しかし、いくら高学歴であっても結局は学生ですから、どうしても実務経験のなさは覆りません。
そのため、学歴などの肩書きよりも、その企業の社風や理念に共感し同じ方向を向いて成長していける人材であることのほうが重要視されやすいです。ベンチャー企業への就職を志望するのであれば、学歴よりも、経営者の見据えている会社の将来像を共有できることや、急激な成長に積極的についていけるだけの自主性や適応力があることなど、戦力になる人材であることをアピールしましょう。
参考:ベンチャーに学歴は必要なのか?ベンチャー企業に求められる能力を紹介|ベンチャー就活ナビ
地方公務員
公務員の採用試験においては、応募書類に大学名を記入する欄がないため、学歴フィルターはないといえます。特に地方公務員は、同じ公務員でもより難易度の高い国家公務員のほうへ高学歴の学生が流れる傾向があることからも、比較的学歴の影響が少ないことが想像できます。
また、公務員試験は高卒や短大卒でも受けられますから、就職してからはそういった経歴の人たちとも一緒に働くことになります。職務内容も変わらないことが多いので、多種多様な経歴の上司・部下と共に学歴にとらわれずに働いていくことが求められるでしょう。地方公務員にとっての学歴は、学力があれば就活時の筆記試験の役に立つ、程度の認識でいるのがよいかもしれません。
参考:【学歴分布一覧あり】地方公務員に学歴フィルターは存在するのか – 元公務員の自治体ラボ
学歴はどの程度あれば就活に有利なの?

就活において、企業・業界によっては学歴フィルターが存在することを説明しました。
では、具体的にどの程度の学歴があれば学歴フィルターで足切りされることを心配せずに済むのでしょうか。
学歴フィルターにはいくつかのラインがあります。上から順番に見ていきましょう。
東京一工
東京大学、京都大学、一橋大学、東京科学大学(旧:東京工業大学)の4校です。いずれも国内トップクラスの国立大学であり、これらの大学を卒業していれば、学歴で不利になることはまずないといってよいでしょう。
旧帝大/早慶上智
北海道大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学の国立大学5校と、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学の私立大学3校です。これらの大学も、一般的に高学歴と呼んで差し支えありません。就活において不利になることはほとんどないでしょう。競争率の高い業界などでは、ここを足切りラインとしている場合もあります。
GMARCH/関関同立
学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の関東の私立大学6校と、関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の関西の私立大学4校です。学歴フィルターを用いている企業の多くは、ここを足切りラインとしているとみられています。
その他国公立大学/日東駒専/産近甲龍
上記以外の国公立大学と、日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学の関東の私立大学4校、そして京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学の関西の私立大学4校です。ここまでが一般的に「有名大学」と呼ばれるラインとされ、学歴フィルターを用いつつもより多くの学生を検討したいと考えている企業はここまで足切りラインとする場合もあります。
国立大学と早慶までの私立大学はほとんど不動の位置にあるとみてよいでしょう。しかし、GMARCH/関関同立以下の私立大学は、近年は常に序列の変動の中にいます。たとえば関東の私立大学では、上智大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、東京理科大学の5校を総称した「SMART」というくくりも生まれています。
偏差値でグループ分けされがちな大学ですが、学校ごとにそれぞれ個性があり、また同じ大学の中でも学部によっても偏差値や印象が異なります。さらに企業や業界によっては私立大学より国公立大学のほうを評価する、という場合もあります。
また、大学名だけでなく、学部や学科も就職に関係してきます。たとえば、文系と理系では理系のほうが就活しやすいとされています。理系のほうが大学で勉強したことを直接活かせる仕事が多いという側面から、研究内容を見た企業のほうから声をかけられて就職が決まる学生が多いためです。そうなると、大切なのはあくまで研究内容とその成果であり、在籍する大学の偏差値はあまり重視されません。
理想をいえば、自分のやりたいことが勉強できる大学に進学することが一番です。しかし、受験生の中には、まだ自分が将来何をしたいか具体的に決まっていない人もたくさんいるでしょう。たとえ決めていると思っていても、大学に入って視野が広がることで価値観も変わり、進路を選んだときとは違う考えを抱くようになるかもしれません。
そうなったとき、偏差値の高い大学にいたほうが選択肢を多く持てることは確かです。いざというときに学歴が理由でやりたいことを諦めることにならないように、ひとまず「高学歴」を目指してみるというのは決して悪いことではありません。
参考:就活の学歴フィルターはどこから?学歴の差を超えて内定を勝ち取る方法を解説 | リクペディア|内定獲得に役立つ就活情報サイト
まとめ
今回は、学歴と就職の関係について解説してきました。
結論としては、学歴は就職に関係してきます。しかし、あくまで採用における基準の一つとして活用されているだけであり、学歴だけで就職が決まることはありません。学歴を重要視しない企業・業界ももちろん存在しています。
また最近は、大学のほうが「就職率の高さ」を売り文句にしている例もありますが、「その大学に進学すれば必ず希望通りの就職ができる」ということはありえません。こちらも同様にあくまで志望校を選ぶ際の判断基準の一つと考えましょう。
大学の評価も企業の採用基準も、時代の流れと共に移り変わっています。大学選びで一番大事なのは「自分のやりたいことができるかどうか」であることを忘れずに、広い視野を持って動きましょう。
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