
日本でも「秋入学」という選択肢が少しずつ広がりを見せています。
特に海外留学を目指しているような人とっては大きなメリットとなる一方、就職活動や学事暦との違いから注意が必要な点もあります。
本記事では、秋入学の概要や魅力、デメリットを整理し、具体的にどのような学校で実施されているのかを紹介します。検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
秋入学とは?

秋入学とは、通常の4月に入学するのではなく、9月〜10月といった秋ごろにかけて入学する制度を指します。
日本の多くの学校は新学期を4月に始める一方、アメリカやヨーロッパなど海外の多くの学校は9月から新学期がスタートします。そのため日本でもこの制度を取り入れる大学が増えています。特に、留学を視野に入れていたり、将来グローバルなキャリアを考えている学生にとって、秋入学は非常に魅力的な制度といえるでしょう。
また、秋入学を取り入れることで、大学もより国際的な教育環境の整備に取り組むことができます。そのため秋入学は、グローバルに活躍できる人が輩出しやすくなることにもつながっているでしょう。
カリキュラムはもちろん、年間スケジュールが春入学とは異なるため、事前の入念なリサーチが必要です。自分の学びたいことや将来像を踏まえて、検討していきましょう。
参考:大学の秋入学(9月入学)のメリットは海外からの人材が集まること
秋入学は9月と10月どっちに入学するの?
秋入学は、学校や学部によって具体的な入学時期は異なるため、事前に確認する必要があります。
例えば、海外の大学では9月に新学期が始まることが多いですが、日本国内の秋入学では10月ごろが一般的です。また、国際的な視点を重視する大学では、海外の大学との連携を踏まえて9月ごろの入学を採用するケースもあります。入学時期の確認は怠らないようにしましょう。
ただ、日本では4月の春入学が主流であり、就職活動や学内イベントもそれに合わせて計画されていることが多いです。そのため、秋入学を希望する場合は、春入学とは異なる動きが必要となるので、プランを立てる際には慎重にならなくてはいけません。
例えば、奨学金や留学プログラムに応募する際にもスケジュールが変わることがあるため要注意です。
スケジュールをはじめとした情報を事前に集め、自分に合った入学プランを立てる必要があるので気を付けましょう。
参考:秋入学が可能な大学ってある?秋入学のメリットについても解説
秋入学のメリット

秋入学は、日本の学生にとって多くのメリットを提供します。特に、海外大学と入学時期を合わせることができる点において、帰国子女や留学を考えている学生にとっては大きな魅力となります。
以下に、その具体的な利点を、帰国子女と留学希望者の視点からご紹介します。
留学しやすい
これまで、日本の学生が留学を考える際、多くの場合は秋入学のために、春からの数か月間を空白期間として過ごすことが一般的でした。
しかし、日本の大学が秋入学を導入することによって、留学を考えている学生は、空白期間を無駄にすることなく、スムーズに留学先に参加できるようになります。
特に、帰国子女にとっては、秋入学の日本の大学と海外大学の入学時期が一致するため、帰国後に学業をこれまでのスケジュール通り続けることができる点が大きなメリットです。留学に行く学生にとっても、留学先の学期と日本の学期がうまく合致するため、空白の期間を避けることができます。
また、留学については以下の記事でも詳しく説明しているので、気になる方はご覧ください。
落ち着いて就職活動ができる
秋入学のメリットの一つに、就職活動のタイミングが春入学者と異なる点も挙げられるかもしれません。
秋入学の学生は、春入学の学生とは異なるタイミングで企業に応募するため、競争が少なく、より活動しやすい状況で採用活動に臨むことができる可能性もあります。
採用のピーク時を避けて活動することができるため、秋入学は落ち着いて自分に合った職場を選べるチャンスを得ることができるともいえるのです。
国際的な交流の機会が増える
秋入学には、帰国子女や留学生が多く在籍しているため、国際的な交流の機会が増えます。
秋入学制を導入している多くの大学では、授業の英語化、海外留学の義務付けなど国際的なプログラムやイベントが設けられており、秋入学を通して留学生との交流が自然と生まれます。
特に、帰国子女として日本に戻ってきた学生や、これから留学を考えている学生にとって、より一層グローバルな視野を広げる選択肢となるでしょう。海外の大学からの帰国生や、世界各国からの留学生とともに学ぶことができるため、まるで日本にいながら留学生活を体験するかのような経験ができるかもしれません。
これにより、異なる国や文化的背景を持つ学生と意見を交換し、視野を広げることもできます。
また、秋入学の学生でも授業やサークルなどを通じて、春入学の学生と接点を持つ機会はあるでしょう。ほかにも、学園祭など大学内のイベントや活動を通じて、より多くの人脈を築くことができます。
参考:【図解】9月入学制度ってどうなんだろう? – エデュコン教材制作
参考:9月入学ってどうなの? メリット・デメリットと意見が分かれる理由について
参考:大学の秋入学(9月入学)のメリットは海外からの人材が集まること
秋入学のデメリット

秋入学は、海外大学との学期に合わせやすく、帰国子女や留学を予定する学生にとって理想的な選択肢の一つです。
しかし、日本では多くの学校が春の4月入学が一般的なことから、秋入学には特有のデメリットも存在します。
そんなデメリットについて、帰国子女や留学を目指す学生の視点を交えて紹介します。
不安感や孤独感を感じやすい
日本では4月に学年がスタートするため、秋入学者はスタート時期がずれ、周囲と異なるタイミングでの入学となります。
この違いは、帰国子女や留学を控えた学生にとって不安の要因となってしまうこともあるかもしれません。多くの友人がすでに大学生活を始めている一方で、自分だけがまだ入学していない状況や、生活の拠点が定まらない時期が続くことで、孤独感を抱きやすくなることがあるでしょう。
特に4月は日本社会全体が新しい生活や年度の始まりで盛り上がる季節です。そんな中で、秋入学者が「取り残されている」と不安を感じることはありえることでしょう。
このような不安を和らげるために、春の段階から積極的に活動することが大切です。例えば、インターンシップやボランティア活動などに参加することで、社会とのつながりを感じられるでしょう。
また、海外大学進学を見据えている場合は、海外大学の入学審査で見られることもあるボランティアなどの課外活動や、IELTS・TOEFLなど留学に役立つ資格の取得や勉強を進めるのも有効です。
これにより、他の学生と異なるタイミングであっても、充実した日々を送り、孤独や不安を感じることなく秋を迎えることができるでしょう。
サポート体制が不十分な場合がある
秋入学を導入する学校が増えてきたとはいえ、依然として多くの日本の大学では春入学を前提にサポート体制が整備されています。
現状は履修登録やカウンセリング、奨学金の申請手続きなど、学生をサポートする多くの制度が春入学者向けに設計されているケースが多いのです。そのため、秋入学者にとってはサポートが行き届いていないように感じることもあるでしょう。
さらに、キャンパスでの新入生向けオリエンテーションやイベントも4月に集中することが多いため、帰国子女や留学生を含む秋入学の学生に必要な情報が不足することもあります。
秋入学を検討する人は、自分から積極的にリサーチし、状況に応じてサポートを求めにいく能動性が比較的必要になることを理解しておきましょう。大学の公式サイトや、過去に秋入学を経験した学生の口コミなどを活用し、または大学に直接電話問い合わせするなどして、サポート体制を把握していきましょう。
周りと就活のスケジュールが異なる
秋入学を選ぶと、就職活動の時期が一般的な日本の企業とずれることにも注意が必要です。
外資系企業や一部のグローバル企業では、秋入社制度があることもありますが、多くの国内企業では4月の入社を基準としており、秋卒業の学生がそのタイミングで入社するのが難しい場合もあります。そのため、秋入学を選択する際は、卒業後の就職スケジュールも見据えた計画が必要です。
例えば、公務員試験は3月卒業に合わせたスケジュールで行われるため、9月入学の学生にとっては試験準備が通常よりも難しくなる場合があります。
また、日本のインターンシップの多くが春や夏に開催されるため、秋入学の学生にとっては卒業するための大事な試験や授業と重なってしまうケースが多くなり、参加できないという問題が起こることもあるかもしれません。
しかし、通年採用のインターンシップを活用したり、早期から情報収集を行うことで、このデメリットは十分に克服可能です。帰国子女や留学経験者としての視点を活かしたり、そうした方々との交流を通じて得た柔軟な価値観を活かしたりして、自分に合った企業やインターンシップ先を見つけていくことが、就職活動の成功につながるでしょう。
参考:【図解】9月入学制度ってどうなんだろう? – エデュコン教材制作
参考:9月入学ってどうなの? メリット・デメリットと意見が分かれる理由について
参考:大学の秋入学(9月入学)のメリットは海外からの人材が集まること
秋入学は誰におすすめ?

秋入学は、グローバルなキャリアを目指す学生や留学を考えている人にとって大変魅力的な選択肢です。
特に海外で学ぶことを視野に入れている場合、秋入学は最適なタイミングとなります。日本国内でも、秋入学を導入する大学が増えており、さまざまな学びのスタイルが提供されています。
例えば、帰国子女や留学経験者にとって、秋入学はスムーズに転入・入学ができるなど、スケジュールをうまく調整しやすいため、秋入学は最適な選択肢となります。
さらに秋入学制度の導入によって、大学のグローバル化が進んでいます。特に、海外からの留学生を積極的に受け入れている大学では、国際的な教育環境を整えるために秋入学を取り入れているケースが増えています。
このような環境では、異文化交流の機会が豊富にあり、学生の視野を広げることができます。
そのため、秋入学は留学を目指したり、グローバルなキャリアを志す学生にとって非常に有利な選択肢です。自分の学びたいペースやキャリアに合わせて、最適な入学時期を選ぶことで、充実した学生生活を送ることができるでしょう。
参考:秋入学が可能な大学ってある?秋入学のメリットについて… | 大学
参考:秋入学のメリット、デメリットと、企業の人事戦略への影響を考える【後半】
秋入学を実施している大学や専門学校

秋入学制度を採用する日本の大学や専門学校は、海外の学事暦に対応するため増えてきています。
特にグローバル教育を意識した大学や、留学生受け入れを積極的に行う学校では、秋入学を導入していることが多く、国際的なキャリアを目指す学生に適した選択肢です。
以下に、日本国内で秋入学を実施している大学や専門学校を5つご紹介します。
早稲田大学国際教養学部(SILS)
早稲田大学には複数の9月入学のプログラムがありますが、その中でもひときわ人気があるのが国際教養学部(SILS)です。
国際教養学部では、日本語を母語とする学生には1年間の海外留学を必修としています。そのため、アメリカやカナダといった英語圏はもちろん、ヨーロッパやアジアなどさまざまな早稲田大学協定校へ留学することができるのです。
入学するためには、AO入試を受ける必要がありますが、秋入学により、海外の大学と同じタイミングで学べるため、留学を希望する学生や国際的なキャリアを考える学生におすすめです。
参考:早稲田大学 国際教養学部
上智大学(国際教養学部)
上智大学の国際教養学部も秋入学を採用しています。また、英語で授業を行うプログラムが多彩です。外国人留学生も多く、学生同士が国際交流を深めながら学べる環境が特徴です。
また、上智大学では世界各国の大学と連携した留学プログラムが豊富に用意されており、将来的に海外での活躍を目指す学生におすすめです。
立命館アジア太平洋大学(APU)
立命館アジア太平洋大学は、全学部で秋入学が可能です。
学生の半数以上が海外出身であり、英語と日本語のバイリンガル教育が行われています。
また、APUにはダブルディグリー(2つの学位を取得するプログラム)があり、提携校で学びながら、APUでも学位を取得することができます。そのため、学期スケジュールの調整をする必要があることから、ダブルディグリーを希望する学生は秋入学のシステムを活用しています。
このように、日本国内でも特に国際色豊かな学習環境が整っており、世界を舞台に活躍したいと考える学生に適しています。
参考:入試方式 | APU ADMISSIONS GUIDE | 受験生サイト APUmate.net
参考:2024 年度 ダブルディグリープログラムの参加者募集について
参考:ダブルディグリープログラム(学部)セントエドワーズ大学(SEU)
国際基督教大学(ICU)
国際基督教大学(ICU)は、日本国内でもいち早く秋入学を取り入れた大学の一つで、国際的な視点を重視した学びを提供しています。
そんなICUはさまざまな入試方式があるなかで「ユニヴァーサル・アドミッションズ(Universal Admissions)」を通じて秋入学を実施しています。
秋入学では、主に英語による授業が行われるほか、海外帰国生・留学生を対象としたプログラムが用意されています。
参考:ユニヴァーサル・アドミッションズ EJU利用選抜(4月 / 9月入学)
東京大学
東京大学では、2021年度より一部の学部で秋入学を導入しています。
現在(2024年12月時点では)、教養学部に開設された「PEAK(Programs in English at Komaba)プログラム」が秋入学の対象となっています。
このプログラムは主に海外の学生や国際的な学習環境を求める学生をターゲットにしており、多様なバックグラウンドを持つ学生と交流できるため、学問や経験の幅を広げることができます。
また、東京大学は日本の大学の中でもいち早く秋入学制度を試験的に導入しました。これにより、秋入学に特化したサポートやコミュニティも比較的充実しています。
そのため、国内外でのキャリア形成や国際的な学びに対応する柔軟性を持ちながら、独自の学びと生活を充実させることができるでしょう。
参考:The University of Tokyo, PEAK
参考:【9月入学実施大学まとめ】帰国子女におすすめの秋入学ができる大学【2024年度入試版随時更新中】
まとめ
秋入学の概要やメリット・デメリットを中心に紹介してきました。
秋入学制度を活用することで、海外大学の学事暦に合わせて大学で学ぶことができます。国際的なキャリアを目指す学生や、帰国子女にとって魅力的な環境も整えられています。
ただ、秋入学には不安を感じやすかったり、サポート不足、就職活動のズレといったデメリットも存在します。
帰国子女や留学を予定している学生は、秋入学のメリットを活かしつつ、これらのデメリットを乗り越えていくために、早期の準備・対策と情報収集を心がけましょう。
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