高校生になると、文系のコースに進むか、理系のコースに進むかの文理選択に迫られることになります。その中には、最初は理系を選んだけれど、あとから文系に移る「文転」を考え始める受験生もいるでしょう。
文転したいと思っても、
「これまで理系の勉強をしてきた時間が無駄になるのではないか。。」
「今から文転しても間に合わないのではないか。。」
いろいろな不安が湧き出てくるかもしれません。
そうした不安を解消して文転することにしたり、理系に留まることにしたり、決断するためには文転についてよく知ることが重要です。
文転について深く考えずに、なんとなくのイメージで進路を決めてしまっては進学後に後悔することになりかねません。
この記事では、文転について徹底解説していきます。
文転するか迷っている人は、ぜひ参考にしてください!
文転とは
文転とは、理系を選んで勉強していた高校生・受験生が、途中で文系へ変更することです。また、理系学部に入学した大学生が、文系学部に専攻を変更することも文転といいます。
反対に、文系での進学を目指していた人が理系に転換することを「理転」といいます。また、大学・大学院入学後に文系専攻から理系専攻に移ることも「理転」といいます。
多くの高校では1年生のときに文系か理系かを選び、2年生に進級したときから文系・理系にコースが分かれるという制度になっています。
しかし、高校1年生の段階で大学入学後に勉強したい専攻がイメージできている人は少ないのではないでしょうか。
勉強を進めたり、いろいろな情報に触れたり、さまざまな経験を積むにつれて、何をしたいかが明確になり、その結果文転や理転を考えることもあるでしょう。
文系と理系とで受験における重点科目が異なることから、文転や理転することはきつい、成功率は高くないと感じる人もいます。
たとえば、文系では英語や国語、社会科を重点的に学ぶのに対して、理系では数学や理科が重点科目になります。
高校によっては、文系で数学や理科を勉強したとしても基礎内容に留まったり、一方理系でも、英語や国語を文系ほど深く学ぶことはなかったりします。
しかし、そうしたハードルを乗り越えて文転や理転を成功させる人もいるわけなので、「難しそうだからやめておこう」と浅く考えるのではなく、まず冷静に情報を集めて判断していきましょう。
こちらの記事では、「文転」について詳しく紹介していきます。
参考:文系と理系、高校生が途中で変更したら…? 専門家が語る難しさ、どうしても変えたいなら | 朝日新聞Thinkキャンパス
文転のメリット
まず、文転することによるメリットを確認していきましょう。
自分の望んだ進路に進める
なぜ文転しようと考えていますか?
ここで、理系学部に進みたいけど理系科目が苦手だから文転しようと考えている場合は、一度思いとどまった方がいいかもしれません。苦手を克服する方法を考えてみてください。
文系学部に進みたいから文転したいという人は、当たり前ですが、文転すれば自分の望む進路に進むことができます。
文学や歴史など文転することで専門的に勉強できる分野もあります。そうした分野に興味が湧いて専攻を変えたいと思っているなら、前向きに検討するのもよいでしょう。
また、卒業後に就きたいと思っている仕事によっては、文転する方が有利になるケースもあります。
たとえば、法律に関する深い知識が求められる行政書士や司法書士を目指すなら、大学でも法学部で学ぶことが資格試験に合格することの近道になることは言うまでもないでしょう。
大学受験の難易度が下がることがある
人にはよりますが、一般的に、文転することで大学受験の難易度が下がるといわれています。
たとえば、理系受験する場合は数Ⅲが必要になることが多いですが、文系受験では数学ⅡBまでとなっているので、カバーしなければならない範囲が比較的狭くなります。
また、理系であれば理科科目を受験する必要がありますが、文系は基礎だけでよく、勉強の負担が軽くなります。
たしかに文転すると社会科目の勉強が必要となりますが、数学や理科と違い知識の積み上げがそこまで必要ではなく、理解・応用よりも暗記が求められやすいところがあるため、負担が軽いと感じられることもよくあるでしょう。
場合によっては、倫理や政治経済など暗記量が比較的少ない科目を選択することもできます。
文系には数学を苦手とする人も多く、理系で数学を学んでいた人からすると数学を得点源とできることもあります。
得意・不得意や、好き・嫌いなどがあるので一概には言えないかもしれませんが、文転することで受験を有利に進められる可能性があることは認識しておきましょう。
大学受験で数学を強みにできる
国公立大学の入試では、大学入学共通テストにおいて数学は必須科目です。文系の受験生は数学が苦手な人も多く、文転する前に学んだ数学の知識を得点源にすることが可能です。
また、私立文系学部で数学を使って受験できる学部もあります。
社会科科目より数学受験の方が倍率が低い学部もあるので、志望する大学や学部の受験で数学が使えるか確認するとよいでしょう。
参考に、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の総称)で数学受験できる大学を紹介しておきます。
なお、受験形式が多様なため、主な受験形式のみ記載しています。
| 明治大学 |
|
| 青山学院大学 |
|
| 立教大学 |
|
| 中央大学 |
|
| 法政大学 |
|
参考:一般選抜要項PDFダウンロード|入試総合サイト|明治大学
参考:入試要項
大学入学後に数学の知識が必要になる専攻分野がある
文系学部でも専攻分野によっては、数学の知識が必要になります。
たとえば、経済学部や商学部、経営学部などで数学の履修が卒業要件になっている大学があります。
また、経済学や心理学などで必須となる統計学は、数学を勉強していなければ理解することが困難でしょう。
数学を重点的に勉強する理系としての経験が、文転したあとでも活かせることがあるのです。
就職活動で有利になる
就職活動では「SPI」と呼ばれる、知的能力を測る適正検査が実施されることがあります。
「言語」「非言語」「英語」「構造的把握力」の4分野の問題があり、英語や構造的把握力は企業によって出題されないことがありますが、言語と非言語は必須分野です。
言語分野では国語、非言語分野では数的な処理を測る問題などが出題されます。
そのため、非言語分野の問題について、数学を勉強してこなかった就職活動生に比べて対策にかける時間を少なくできるでしょう。
数学を勉強してこなかった文系生と比較すると、文転した人には優位性があるといえるかもしれません。
文転のデメリット
文転することにはデメリットも伴います。
文転する前に、デメリットを受容できるか、克服できるかをよく考えましょう。
高校の授業で受験に不要な科目も勉強しなければならない
文理の選択時に理系コースを選んだ場合、途中から文系コースに変更できない高校もあります。
そのため、理系科目から文系科目での受験に変更しても高校の定期テストのために受験に不要な理系科目を勉強し続ける必要があります。
推薦を受けずに一般入試で受験する場合は、定期テストで高得点を取るための勉強をする必要はないと言う人もいるかもしれません。
しかし落第点を取らずに進級するためには、大学受験で不要となる理系科目を勉強するために時間を割くことになるということを理解しておきましょう。
就職先の選択肢が減る
一般的に、文系より理系の方が就職先の選択肢が多いです。
理系学生の就職活動では大学で専攻した分野の研究職や開発職などだけでなく、文系学生が応募する総合職や営業職を目指すこともできます。
一方で、研究職の募集は理系学生にかぎられていて文系学生は応募することができないのが一般的です。
また、AIが普及したりビッグデータの分析が不可欠になったりするにつれて、数的処理が得意な理系の学生が求められる職種も増えています。
たとえば、銀行や証券会社など金融機関では、これまで多くの文系学生を採用してきました。
しかし近年では、マーケットの動きを分析したり市場調査したりデータを使って分析するために数学の知識が求められるため、理系のニーズが高まっています。
文転を考えるときには、将来どのような仕事をしたいか熟慮して後悔のない選択をしましょう。
文転はいつまでなら間に合う!?
文転を成功させるためには、文転をするタイミングも重要です。
文転することが自分の将来にとって必要なことなのか、文転しても後悔しないか、反対に文転しなくても後悔しないかをじっくりと考えることも大切ですが、いつまでに決めるべきかというタイムリミットも意識しましょう。
現役受験生は夏休み前までに文転するか決める
現役受験生にとって、夏休みは集中して受験勉強する受験の山場となります。
一般的に高校生は伸びしろが大きく、夏休みの勉強で偏差値を飛躍的に高める人も多いです。そのため、夏までに文転を決めないと受験勉強が間に合わなくなる可能性が出てきます。
ただし、理系の進学先として国公立を志望していたか、私立理系のみを志望していたかで、いつまでに決断すべきかというタイミングも変わります。
国公立を志望している場合は、理系とはいえ大学入学共通テストのために文系科目に触れているので、夏休み後でも間に合うケースが多くあります。
しかし、私立理系を志望していて文系科目を全く勉強していなかった場合は、できるだけ早く決断することを意識しましょう。
Re受験を決めたタイミングで文転する
Re受験生の場合は、現役での受験を終えてRe受験での勉強を始める4月までには文転を決めたいところです。
受験を経験することによって、理系より文系の方が自分に合っていると気づくこともあるでしょう。
しかし、文転すると現役で身につけた知識が使えず、Re受験生であるという現役受験生に対するアドバンテージは少なくなってしまうことがあります。
大学入学後に文転できることもある
大学卒業後に何をしたいか決められずに「理系科目が得意だから」という理由だけで進路選択してしまう学生も多いかもしれません。
自分の将来像が描けないまま理系科目での受験を決めたものの、文系への興味も捨てきれない場合は、大学入学後に専攻を決められる大学を受験するという手もあります。
また、大学で勉強しているうちに理系分野より文系分野に興味をもって文転を希望した場合、進級時に学部や学科を変更する転部・転科という制度を設けている大学もあります。
学部選択時の文転について
入学後に専門分野を選択する仕組みになっている大学もあります。
たとえば、東京大学では入学時に全学生が前期教養学部に入ります。前期課程(1〜2年生)は教養学部で学び、3年生に進級するときに学部・学科を選択するというシステムになっています。
受験時には文科と理科に分かれていますが、どの科類に入学しても、ほぼ全ての学部から進学先を選ぶことができます。
前期教養学部で学ぶ内容は科類によって異なるものもあったり、進学先の学部によっては、2年生前期課程までの成績と進学先が求める科目を履修していることが条件になっていたりするので、入学後の文転を視野に入れている場合は、教養学部での成績で上位を狙ったり、履修科目を慎重に選んだりする必要があります。
なお、以下の東大新聞に文転や理転した学生のインタビューが載っています。
進学選択で文理の壁は越えられるの? 理転・文転した3人にインタビュー – 東大新聞オンライン
大学入学後の文転を検討している場合は、先輩の生の声も参考になるでしょう。
東大以外にも北海道大学や国際基督教大学(ICU)など入学後に所属する学部を選べる大学があるので、いろいろ調べてみてください。
転部・転科による文転について
大学によっては、進級時に所属する学部や学科を変更する転部・転科という制度があります。
しかし、転部・転科は、すべての大学で実施されているわけではありません。また、転部・転科の制度があったとしても受け入れてくれる学部・学科が限られているケースもあります。
さらに、転部・転科の募集人数は若干名ということも多いです。
たとえば、筆者は早稲田大学の文学部から人間科学部に転部したのですが、このときの合格者は2名しかいませんでした。
一般的に転部・転科は狭き門です。
大学入学後に文転すればよいと安易に考えるのはリスクが高く、大学で勉強を始めてから興味の対象が変わったときでも「まだ手段はある」という感じで心に留めておきましょう。
『文転する動機』が重要
文転するか検討するときには「なぜ文転したいのか?」という理由を考えてください。一番大切なのは、文転したいと思うようになった動機です。
ときには、文転することを「逃げ」といわれることもあるでしょう。
たとえば、数学Ⅲの勉強が難しくて文転した場合は、「理系から逃げた」といわれても仕方がないかもしれません。
そして、「逃げ」のために選んだ道は後悔につながることが多いです。
そこで、「自分は将来何をしたいのか?」というゴール起点で考えるようにしましょう。
文系分野の研究に興味を持ったり、就きたい職業が明確になって文系学部出身の方が就職に有利だったり、前向きな動機の場合は積極的に文転を考えてもよいでしょう。
まとめ
文転するかどうかというのは、将来への道筋を決める大きな決断です。
文転するメリットやデメリットを踏まえたうえで、なぜ文転したいのかをよく考えて文転するか、理系にとどまるかを決めましょう。
「決断する」というのは、簡単なことではありません。大人であっても、難しいと感じる人は多いでしょう。
決断するのが難しいときには、Re受験生の志望校の決め方を読んでみてください。自分の志望を明確にする大切さや、志望の決め方のヒントが載っています。
この記事では、文転するかを決断すべきタイミングについても解説しました。
しかし、人生はいつでもやり直すことができます。
文系分野を専門にしたいという強い気持ちがあるのなら「今から文転して遅い」と思う必要はありません。
大切なのは、「自分が選んだ道を正解にする」と考えることです。
どのような道を選ぶか、という選択に正解はないのです。
文転すると決めたら、もしくは理系の勉強を続けると決めたら、その選択を「正解」にすべく、前を向いて進んでいきましょう。
関連
理転の難しさを克服!文系から理……
【受験生必見!】朝勉強のメリッ……

