
「大学進学をあきらめきれないけど、学費も生活費も不安…」
「昼間は働いてお金を稼ぎたいけど、大学にも行きたい…」
このような悩みを持っている方もいるのではないでしょうか。
大学進学には、経済的な負担が重くのしかかります。学費を自分で稼ぐために、アルバイトに明け暮れて勉強がおろそかになってしまったり、大学への進学自体を諦めざるを得なかったりする人も少なくありません。
しかし、経済的な問題を抱えている人も諦める必要はありません! 日本には、日中働きながら夜間に大学で学ぶことができる「夜間大学」という選択肢があるからです。
夜間大学は、その名の通り夜間に授業が行われる大学のこと。学費が安く、働きながらでも通いやすいというメリットがあります。
「夜間大学ってどんなところだろう?」
「本当に働きながら通えるのかな?」
「学力に自信がないけど、入学できるだろうか…」
この記事では、そんな疑問を持つ人に向けて、夜間大学について詳しく解説していきます。夜間大学の仕組みやメリット・デメリット、卒業後の進路、そして夜間大学を選ぶうえでの注意点まで、具体的にイメージしやすいよう、事例を交えながらわかりやすく解説していきます。
夜間大学って?

夜間大学とは、主に夕方以降から夜間にかけて授業を行う大学の授業コースのことです。昼間の大学と同じように文部科学省によって認可された教育機関であり、卒業要件を満たせば「学士」の学位を取得できます。
かつては「第二部」と呼ばれることが一般的でしたが、近年では「夜間コース」「フレックスコース」など、それぞれの大学で独自の名称が使われています。
夜間大学の仕組み:働きながら学びやすい環境とは?
夜間大学の授業は、大学や学部によって異なりますが、多くの場合、18時〜21時頃に開講されます。仕事が終わってから、あるいは家事の合間を縫って通学でき、日中は別の活動に専念できます。
例えば、マーケティングを学びたいけど、経済的な事情から大学進学を諦めて就職した方でも、夜間大学で仕事終わりの時間を使ってマーケティングを学べます。平日は仕事終わりに大学に通い、週末は課題に取り組むなど、忙しいながらも充実した日々を送れます。
授業時間は、1コマ90分〜100分という大学が多く、昼間の大学の授業とほぼ同じです。週に何回通学する必要があるかは、大学や学部、履修登録した科目によって異なります。
また、大学によっては、土曜日や日曜日に授業を行う場合や、オンライン授業を導入している場合もあります。例えば、地方在住で、平日は仕事で忙しくても、オンライン授業を積極的に活用することで、移動時間やコストを抑えながら、自分のペースで学習を進めています。
夜間大学の難易度
夜間大学の入学難易度は、大学や学部によって異なります。
一般的には、昼間のコースと比較して偏差値が低い傾向にありますが、これは昼間の学部よりも応募人数が少なく、人気が上がりにくいことがその理由として挙げられます。
例えば、高校時代はあまり勉強に力を入れておらず、大学進学を諦めていた方でも入学難易度も昼間と比べて低めであるという夜間大学なら、進学可能である場合があります。
学力に自信がないという方も、入学できる夜間大学はあります。自分に合った大学を見つけるために、オープンキャンパスに参加したり、資料請求をしたりして、積極的に情報収集をしてみることが大切です。
夜間大学と昼間大学の違い
夜間大学と昼間大学には、以下のような違いがあります。
学生の属性
夜間大学は、社会人経験者や、家事や育児をしながら学ぶ学生も多く、年齢層も幅広い点が特徴です。さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと出会えることは、視野を広げ価値観を柔軟にするのに役立ち、夜間大学のメリットといえるでしょう。
授業内容
夜間大学の授業は昼間と内容が違うのだろうか?
と気になっている人も多いかもしれませんが、大きな違いはありません。
例えば、東京理科大学の第一部(昼間)と第二部(夜間)では教育内容に大きな違いはなく、同じシラバスに基づいて授業が実施されます。
また、留年することなく単位を取得した場合、昼間の授業コースと同じく4年で卒業できることが多いです。
学費
夜間大学は、昼間の大学に比べて学費が安い傾向があります。学費が安い分、経済的な負担を軽減しながら、大学で学ぶことができます。
例えば、岡山大学法学部の昼間コースと夜間主コースの学費を比較してみると以下の通りです。
入学金 | 授業料 | 初年度納入金額 | |
---|---|---|---|
昼間コース | 282,000円 | 535,800円 | 817,800円 |
夜間主コース | 141,000円 | 267,900円 | 408,900円 |
(出典:大学受験パスナビ)
このように比較してみると、昼間コースと夜間主コースでは大きく学費が異なることがわかります。
夜間主コースの学費は昼間コースの半分ほどで、一般的に安いといわれている国公立大学の昼間コースよりもさらに安い学費で大学に通えるということです。
キャンパスライフ
サークル活動や大学行事などは、昼間の学生が中心となって行われることが多いため、夜間大学の学生は、昼間の学生に比べると、キャンパスライフの自由度は低くなる傾向があります。
しかし、近年では、夜間大学生も参加しやすいイベントやサークル活動も増えてきています。例えば東京理科大学では、第二部(夜間)独自のサークルもあれば、第一部・第二部関係なく入部できるサークルもあると紹介されています。
「夜間だと普通の大学生活は送れないのだろうか…」と考えている方も多いかもしれませんが、近頃は夜間に通っている大学生でも参加できるイベントが増えてきている傾向にあるので、気になる方は調べてみましょう。
プレッシャーにならないもの
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夜間大学のメリット

夜間大学には、以下のようなメリットがあります。
学費が安い
上記でも紹介した通り、夜間大学は、昼間部と比較して学費が安いことが大きなメリットです。大学や学部によって異なりますが、昼間の大学の半額程度で通えるケースも少なくありません。
学費が安い分、アルバイトなどに割かれる労力も減り、経済的な負担を軽減して学ぶことができます。また、学費が浮いた分を、資格取得のための費用や、スキルアップのためのセミナー参加費用などに充てることもできます。
働きながら学べる
夜間大学は、授業時間が夕方以降に設定されているため、昼間は働きながら大学で学ぶことができます。
経済的に自立しながら大学で学びたい方や、仕事で経験を積みながら専門知識を深めたいと考えている方にとって、夜間大学は良い選択肢といえるでしょう。
例えば、企画職として働いていれば、日中は会社の業務を通して、実践的なマーケティングの知識を身につけています。そして、夜間大学で学ぶマーケティングの理論と、日中の仕事で得た実践的な知識を結びつけることで、より深い理解を得ることができるでしょう。
このように、夜間大学では、理論と実践を結びつけながら学ぶことがしやすいため、より実践的にスキルを身につけることができます。
多様な学生と交流できる
夜間大学には、社会人経験者や留学生、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が集まります。年齢や経験が異なる学生と交流することで、多様な視点や考え方を学ぶことができます。
これは、高校生からそのまま大学へと進学している学生が多い昼間の大学には少ない、夜間大学の魅力です。
このように、夜間大学では、年齢や経験、価値観の異なる人たちとの交流を通して、人間的に大きく成長することが期待できます。
夜間大学のデメリット

夜間大学には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。
夜間大学への進学を検討する際は、デメリットも理解したうえで、総合的に判断することが重要です。
時間管理が難しい
仕事や家事、プライベートの時間と、学業の両立は容易ではありません。限られた時間の中で、効率的に学習を進めていくためには、時間管理術を身につけることが重要です。
夜間大学は、夜間に授業を実施することで時間調整がしやすいように配慮されていますが、日中の活動と授業や課題を両立させることは難しいです。
そのため、夜間大学で単位を取得して卒業するためには、時間管理能力が必要になります。
時間管理のコツを少し紹介します。
- タイムスケジュールを作成する: 1週間のスケジュールを立て、仕事、学習、プライベートの時間などを明確に区切りましょう。
- スキマ時間を活用する: 通勤時間や昼休みなどのスキマ時間を有効活用し、授業の予習・復習などの時間を捻出しましょう。
- 集中力を高める: 学習時間を確保したら、スマートフォンやテレビなどの誘惑を遠ざけ、集中して学習に取り組みましょう。基本的に夜間大学生には時間がないので、少しでも時間を無駄にしないように努めることが大切です。
昼間の学生との交流が少ない
夜間大学は、昼間の学生との交流が少ない点がデメリットとして挙げられます。
サークル活動や大学行事などは、昼間の学生が中心となって行われることが多いため、関わりを増やしたければ積極的になるよう意識する必要があります。
しかし、近年では、上記で紹介した東京理科大学のように、夜間大学生も参加しやすいイベントやサークル活動も増えてきています。大学側も、夜間大学生と昼間大学生の交流を促進するための取り組みを積極的に行っています。
昼間大学の学生との交流を増やすために、以下のようなアクションを検討してみてください。
- サークル活動に参加する: 興味のあるサークルがあれば、積極的に参加してみましょう。夜間部の学生も所属できるサークルや、夜間部専用のサークルもあります。
- 大学主催のイベントに参加する: 大学では、講演会や交流会など、さまざまなイベントが開催されています。積極的に参加することで、昼間の学生と交流する機会を増やすことができます。夜間大学生でも、参加しやすいように大学側が時間の配慮をしていることが多いので、心配ありません。
- 昼間学部の授業を履修する:夜間学部を開講している大学の中には、昼間学部の授業を履修できるシステムを整えているところもあります。そのような授業を履修することで、昼間学部に在籍している他の学生との交流を増やせるでしょう。
大学生活を送るうえでの制約が多い
夜間大学は、昼間の大学と比べて、大学生活を送るうえでの制約が多い点がデメリットといえるでしょう。
例えば、図書館や大学の施設の利用時間が限られていたり、サークル活動に参加しにくかったりする可能性があります。
しかし、制約がある中でも、工夫次第で充実した大学生活を送ることができます。
例えば、図書館の利用時間が限られている場合は、事前に借りたい本を予約しておいたり、電子書籍を利用したりするなど、工夫次第で充実した学習環境を整えることができるでしょう。
また、サークル活動やボランティア活動に参加する時間がなかなか取れない場合は、アルバイト先で新しいことに挑戦したり、地域のボランティア活動に参加したりするなど、大学の外で活動の幅を広げてみるのも良いでしょう。
夜間大学でおすすめの大学

ここでは、夜間大学でおすすめの大学を3つご紹介します。
法政大学
法政大学は、東京都千代田区に本部を置く私立大学です。1880年に創立された歴史と伝統のある大学であり、多くの卒業生が社会に輩出しています。
法政大学では、夜間部としては珍しい社会人のための大学院を開講しており、経営学などさまざまな分野の学びを深められます。
法政大学の魅力は以下の通りです。
- 歴史と伝統: 法政大学は、1880年に創立された歴史と伝統のある大学です。長い歴史の中で培われた、質の高い教育と研究を提供しています。
- 充実したサポート体制: 夜間部学生のためのキャリアサポートセンターが設置されており、就職活動やキャリアに関する相談に親身になって乗ってくれます。法政大学は「キャリアデザイン学部」という他ではあまり見られない学部があることもあり、質の高いキャリアサポートを期待できるかもしれません。
- 都心の一等地という好立地: 東京都千代田区という都心の一等地にキャンパスがあり、交通アクセスも抜群です。「仕事帰りにも通いやすい」という人も多いでしょう。
日本大学
日本大学は、東京都千代田区に本部を置く私立大学です。学生数約7万人を誇る日本最大規模の総合大学であり、16学部、大学院20研究科、短期大学部、通信教育部、専門学校など、多岐にわたる教育機関を擁しています。
夜間大学は、「法学部第二部」という名称で、法律学科が設置されています。
日本大学の法学部第二部は、昼間の学部と変わらない教員や授業のクオリティが確保されており、高いレベルの授業が受けられます。
また、日本大学の法学部第二部の場合は、2年と3年の進級のタイミングで昼間の学部に転部することも可能です。何かライフスタイルに変化があって、昼間の学部で学びたいと思った場合でも、日本大学ならそれが実現します。
埼玉大学
埼玉大学は、埼玉県さいたま市に本部を置く国立大学です。関東で夜間学部を設置している数少ない国立大学です。
夜間大学は、「経済学部(夜間主コース)」という名称で、経済学部が設置されています。
国立大学の埼玉大学では、夜間で経済について学べるのはもちろんのこと、他の私立大学の夜間学部よりも安い学費で通学できます。
例えば、今回紹介した日本大学と比較すると以下の通りです。
入学金 | 授業料 | その他 (施設利用料等) |
初年度納入金額 | |
---|---|---|---|---|
埼玉大学(※1) | 141,000円 | 267,900円 | 408,900円 | |
日本大学(※2) | 160,000円 | 470,000円 | 110,000円 | 740,000円 |
参考1:パスナビ
参考2:日本大学法学部
夜間大学の卒業後の進路

夜間大学を卒業した学生の進路を、進学・就職ごとに見てみましょう。
進学
夜間大学を卒業してから、大学院に進学する人は一定数います。
例えば、東京理科大学の第二部の数学科は卒業生の24.8%が大学院へと進学しています。化学科は35.5%とさらに多く、多くの学生が大学院へと進学していることがわかります。
他にも日本大学法学部第二部では、卒業生が日本大学はもちろん、他にも京都大学や千葉大学、中央大学の法科大学院へと進学しています。
駒澤大学法律学科の夜間コースにあたるフレックスBコースの卒業生も、全国各地の法科大学院に進学していると紹介されています。
就職
夜間大学を卒業して、進学をしない学生の多くは就職をします。卒業生の就職する割合・就職先の企業には、昼間部の卒業生と大きな違いはありません。
参考にいくつかの大学夜間部の就職先情報を紹介します。
東京理科大学第二部数学科の場合、NTTデータファイナンシャルコアや大塚商会などの情報通信業に就職している人が23.7%、公立中学校・高校、私立中学校・高校などの教育・学習支援業に就職している人が11.3%います。
日本大学法律学科第二部では、建設業や製造業、情報通信業など、約66%の卒業生が就職しています。
駒澤大学法律学科のフレックスBの卒業生は、アイリスオーヤマ株式会社、佐川急便株式会社、日本交通株式会社、JFE商事鉄鋼建材株式会社など、さまざまな企業へと就職しています。
まとめ
今回は、夜間大学について、その仕組みやメリット・デメリット、おすすめの大学、卒業後の進路について解説しました。
夜間大学は、経済的な事情で大学進学を諦めかけている人、働きながら学びたいという人、自分自身の成長を促したいという人にとって、大きな可能性を秘めた選択肢です。
大学選びの際は、自分の興味関心、将来の夢、そしてライフスタイルなどを考慮し、自分に合った大学を見つけ出すことが大切です。オープンキャンパスに参加したり、資料請求をしたりして、積極的に情報収集を行いましょう。
夜間大学には、時間管理の難しさや、昼間の学生との交流が少ないなど、デメリットも存在します。しかし、それらを上回るほどの魅力と、未来を切り拓くチャンスがあるといえるでしょう。
この記事を参考に、夜間大学という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。