
皆さんは大学の図書館を利用したことはありますか?
大学在学中の人であれば、自分の通っている大学の図書館はレポート作成のために利用したことがある、という方も多いと思います。
また図書館は資料を探すだけでなく、自習室としても利用できる、大変便利な施設です。
そんな大学図書館について、
「探している資料が他大学の図書館にしかないので利用したい。」
「社会人でも大学の図書館を利用することができるのか?」
という疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
この記事では、「大学の図書館は誰でも利用できるのか」という疑問を解決します。
おすすめの大学図書館も紹介していきますので、通っている大学の図書館以外を利用してみたい方は必見の内容です。
ぜひご覧ください。
そもそも図書館って?

そもそも「図書館」という施設は、どのような定義の施設なのでしょうか。
日本図書館協会によると、図書館とは日本の「図書館法」に基づき、図書や資料を収集、整理し、一般の人に提供することを目的とする施設だとされています。
図書館の歴史は古く、紀元前7世紀にはアッシリアに存在していました。
ただし当時の本(粘土板)は希少性が非常に高く、その利用はごく限られた人にしか許されていませんでした。
9世紀頃の中世ヨーロッパでは本に羊皮紙が使われるようになり、修道院に図書館が設立されるようになりました。
しかし羊皮紙であってもまだまだ高価であり、写本一冊で家が買えるほどだったので、修道院にある図書館の本は鎖で本棚に繋がれていました。
今日のように一般人が広く利用できるようになったのは19世紀後半に公共図書館が誕生してからです。
図書館は、運営者の種別によって分けられます。
いくつか紹介していきます。
国立図書館
国立図書館は、国民に図書を提供する役割のほかに、国会の立法・調査をサポートする役割も果たす、日本最大規模の図書館です。
また、多くの資料を保存している図書館として、重要な資料をデジタル化して公開したり、資料の目録情報を提供したりするなど、全国各地の図書館をサポートする役割も担っています。
国会図書館は2つの中央図書館と26の支部図書館からなり、中央図書館は東京本館と京都にある関西館があります。
公共図書館
公共図書館とは、自治体が設置している「公立図書館」と、法人などが設置する「私立図書館」の総称です。
公共図書館は、その地域に住む住民に図書館の持つサービスを無料で提供する施設です。
公立図書館は自治体の規模によって、都道府県立図書館、市区町村立図書館に分けられます。
住民によりサービスを届けやすくするために、同じ自治体内でも複数の図書館に分けられる場合もあります。
私立図書館は日本赤十字社または一般社団法人、または一般財団法人が設立した図書館で、公立図書館と違って利用料を徴収することを禁じられていません。
また設立者の意図に沿った専門分野を深く取り扱った図書館であることが多いです。
公共図書館では、図書以外にもDVDなどの視聴覚資料の貸し出し、地域の情報の提供、学習支援、お話会などのイベントなど、地域住民のニーズに応じて幅広くサービスを展開しています。
大学図書館
今回の記事の主題でもある大学図書館は、その大学の学生・教職員の学習や研究に必要な資料を保存し提供する施設です。
そのため保存されている資料の多くが専門的なものであることが多いです。
近年は図書保管や提供だけではなく、「図書館の設備案内」「英語論文の探し方」など学生の情報利用を支援するプログラムが実施されています。
加えて地域住民への開放や情報提供など、幅広い活動を行うようになってきています。
学校図書館
学校図書館は大学図書館とは区別され、高校までの学校に設置される図書館です。
学校のカリキュラムを支援し豊かにすることを目的として、日本では「学校図書館法」に基づいてすべての学校に設置することが義務付けられています。
子どもたちの情報収集能力を鍛えるとともに、読書の楽しみを知ってもらう役割を果たしています。
専門図書館
専門図書館とは、各種の組織の構成員を対象に、その組織の目的実現のために設置される図書館です。
官公庁の設置する図書館、企業の図書館、各種研究機関に設置される図書館などがこれにあたります。
例えば愛知県豊田市にある体育とスポーツの図書館は、その名の通り体育やスポーツに関する専門図書館です。
愛知県の体育教師が中心となって設立し、スポーツに関する約1万冊の蔵書が保管されています。
味の素文化センターの「食の文化ライブラリー」も専門図書館の一つです。
約4万冊の蔵書が保管されており、江戸から昭和にかけて発行された貴重な料理書も保管されています。
このように、一口に図書館といってもさまざまな種類があり、その種類によって規模や保存されている資料が異なります。
参考:図書館について
大学図書館は誰でも利用できる?

ここまで、図書館の定義と図書館の種類を見てきました。
それでは、大学の図書館は誰でも利用できるのでしょうか。
大学によって一般利用の可否は異なりますが、おおまかには、
- 国立大学の図書館は広く利用を許可している
- 私立大学の図書館はキャンパスのある地域の住民のみ利用できる
- 利用したい大学のOBOGであれば利用できる
場合が多いです。
ただし、あくまでも大学に所属する人たちのための施設なので新学期や試験期間などは一般利用を停止している場合があります。
利用する場合は事前に利用可能か確認してから行きましょう。
また大学生であれば、提携している他大学の図書館利用を許可されている場合もあります。
例えば、慶應義塾大学の学生は早稲田大学の一部図書館の利用が許可されています。
そして自宅から近い大学図書館を自習室として利用したい、という方もいるかと思います。
一般利用を許可している大学であっても、大学によっては図書館資料の閲覧を目的とする人のみに利用を許可している大学もあります。
そのような記載のない大学であっても、自習不可という記載がされていないだけで明確に許可されているわけではない大学がほとんどなので、どうしても自習目的で大学の図書館を利用したい場合は事前に確認する必要があります。
大学図書館を利用するメリット

大学図書館の一般利用については、条件付きではあるものの利用可能であることが多いということがわかりました。
それでは、近所の公共図書館ではなく大学図書館を利用するメリットはなんでしょうか。
何点か紹介していきます。
公共図書館にはない専門的な資料を閲覧することができる。
大学図書館は公共図書館に比べて図書や資料の種類が豊富で、新刊図書もより早く読むことができることが多いです。
そして大学の図書館には、学生や教授の研究をサポートするために、大学の分野に沿った専門的な資料も保管されています。
専門的な資料は高額で購入をしたくてもできないものも多いうえ、それぞれの大学に所属した教員の研究に関するレアな資料なども存在するため、専門的な資料が読みたい人にはぴったりの場所であるといえるでしょう。
パソコンの利用がしやすい
場所にもよりますが、公共図書館の中には、パソコンの利用を禁止していたり、利用可能場所が限られていたりする場合があります。
これは読書を目的とした広い世代の地域住民のための施設であるためで、パソコン利用はキーボードを打つ音が迷惑にもなるので仕方のないことだと思います。
それに対し大学図書館は、レポート作成や研究のために利用する人が多いので、パソコンの利用が制限されていないところがほとんどです(もちろん音楽を流すなどの行為は禁止ですが)。
パソコンを利用した勉強や仕事をしたい人には大学図書館の方が適しているといえるでしょう。
静かで集中しやすい
公共図書館は小さい子供からお年寄りまで、利用層が幅広いです。
致し方ないことですが、キッズスペースがある図書館では特に周りの音が気になる可能性があります。
それに対し大学図書館は利用者の大多数が勉強に来ている学生のためとても静かです。
集中して作業したい場合は大学図書館は適しているといえるでしょう。
貸し出し期間があるために読書が捗る
こちらは大学図書館だけではなくすべての図書館を利用したときにも同じことがいえますが、図書館で図書を借りると多くの場合は2週間という貸し出し期間が設けられます。
一度借りられたら2週間で読み切らないといけないので、購入した本よりメリハリがつき読書が捗るというメリットも考えられるわけです。
大学図書館以外の選択肢も

上の章で触れたように、大学図書館の利用には多くのメリットがあります。
しかし、やはり大学図書館はその大学に所属する人たちの利用が主たる目的の施設なので、試験期間などなかなか利用しづらい期間もあります。
大学図書館の利用動機によっては、他の代替手段も考えられるので、その代替手段を紹介します。
勉強を目的とする場合
勉強をすることを目的として大学図書館を利用したい人は、近所の公共図書館の利用も検討しましょう。
勉強をするという目的であれば、大学図書館と公共図書館はほとんど同じような環境であるといえます。
公共図書館以外にも、カフェや有料の自習スペース、カラオケなども定番の自習場所です。
こちらも検討してみてください。
情報収集を目的としている場合
情報収集を目的として大学図書館の利用を検討している場合、ネットでの情報収集でもある程度資料を集めることは可能です。
例えば、国立図書館のデジタルコレクションというサイトを利用すれば、国立図書館で保存されているデジタルの資料を閲覧することができます。
また、今ではインターネットのサイトを参考にしたりYouTubeを利用したりすることで情報収集することも可能です。
論文であればCiNiiというサービスを利用することで調べることもできます。
このようにわざわざ大学図書館に出向かなくても、オンライン上で情報を入手することができます。
おすすめの大学図書館
これまで大学図書館の魅力や利用することのメリットについて紹介してきました。
ここではいよいよ、数ある大学図書館の中でもおすすめの大学図書館をいくつか紹介していきます。
すべての大学図書館に共通する注意点として、通常は一般利用を許可している図書館でも期間によっては利用を制限している場合があります。
来館する場合は必ず事前に確認してから行きましょう。
東京大学 総合図書館
東京大学の図書館は全部で52の図書館と図書室があり、大学図書館の中で最も多くの蔵書を保存しています。
蔵書総数はなんと約991万冊で、その規模は国会図書館に次ぐ全国第二位の規模になっています。
数ある東京大学附属図書館の中でも東京大学総合図書館は約130万冊を保管している最大規模の図書館です。
赤い絨毯の敷かれた大階段が特徴的な、開館140年の歴史ある建物です。
一般利用に関しては、公共図書館にはない資料の閲覧・複写のための短時間の入館が許可されています。
自習のための座席利用は禁止されています。
総合図書館を利用したい場合は、3平日開館日前までに公式サイトから利用予約をする必要があります。
利用当日に予約なしで入館することはできないので注意しましょう。
大阪大学 総合図書館
大阪大学の図書館は、特に総合図書館の規模が大きいことで知られています。
6階建ての図書館に約262万冊が保管されており、一つの図書館の蔵書数では全国トップクラスになります。
こちらの図書館も、座席利用のみを目的とした利用は禁止しており、18歳以上の人の資料の閲覧と複写目的でのみ入館が許可されています。
入館には、現住所の記載された本人確認書類を持参し図書館利用者票を発行する必要があります。
図書館カウンターに書類を持参し申込書に記入することで発行できるので、即日利用することが可能です。
参考:卒業生・学外一般の方の利用について | 大阪大学附属図書館
近畿大学 ビブリオシアター
近畿大学の図書館は、特に2017年に誕生したビブリオシアターという図書館が有名でおすすめできます。
図書のジャンルを問わず、手に取った図書に関連して興味を持ちやすそうな図書を近くに配置するという独自の分類法を導入しており、思いがけない本との出会いが期待できます。
また例えば、漫画の近くにその漫画のジャンルに近い文庫本や新書を配置することにより、普段漫画しか読まない人の読書を促すことなども期待しています。
このビブリオシアターには蔵書総数約7万冊のうち漫画も約2万2000冊保管されており、新しい時代の図書館という印象です。
このビブリオシアターを含めた近畿大学の一般利用は、20歳以上の近隣の住民、または近畿大学の公開講座を受講した人のみに許可されています。
利用料として年間6000円を支払う必要があります。
申請は公式サイトのフォームに記入して送信します。
また、大阪府下に在住もしくは通学している高校生は夏期期間に限り利用ができます。
こちらも事前の手続きが必要ですが、貴重な機会ですので当てはまる方はぜひ行ってみてください。
明治学院大学 日本近代音楽館
明治学院大学の附属日本近代音楽館は、日本の近代音楽を対象とする専門資料館で、明治時代以降の日本の西洋音楽に関する資料を多数保管しています。
山田耕筰など日本の作曲家の自筆譜や録音資料などもあるので、その分野の資料が欲しい人には最適の図書館であるといえるでしょう。
こちらの施設は一般公開を行っています。
18歳以上の人の利用が可能で、事前に電話での予約が必要です。
利用料は当日のみで100円、年間利用で500円かかります。
参考:利用案内 | 遠山一行記念 日本近代音楽館
明治大学 附属和泉図書館
明治大学の和泉図書館は、会話が可能な図書館として有名です。
1階から4階に進むにつれて、会話可能なスペースから静かなスペースへと分けられており、長期間滞在を想定した居心地の良い空間づくりを目標に設立された図書館です。
一般利用に関しては、20歳以上で世田谷区、杉並区在住の方は貸出の利用が許可されています。
地域の公共図書館の利用カードを持っていることも条件になります。
図書館カウンターにて本人確認書類と公共図書館利用カードを持参し、ライブラリーカードを作成することによって利用が可能になります。
上記の地域住民の方以外は、貸出以外であっても利用することはできません。
ご注意ください。
国際教養大学 中嶋記念図書館
秋田県にある国際教養大学の中嶋記念図書館は、24時間365日開館している特徴的な図書館です。
学生が制限なく勉強できるように、そのようなかたちをとっています。
秋田杉と秋田の伝統技術を活かした傘型の屋根も特徴的です。
講義がすべて英語で行われている大学ということもあり、保管されている蔵書は洋書約5万冊、和書約3万冊と、洋書の方がはるかに多い図書館です。
中嶋記念図書館の一般利用はなんと誰でも入館可能です。
ただし入館時間は制限されており、平日は午前8時30分から午後10時、土日祝日、長期休暇期間は午前10時から午後6時です。
図書の貸出には図書利用カードが必要で、本人確認書類をカウンターに提出することによって作成可能です。
以上のように、制限はあるものの一般利用を許可している大学図書館は多数あります。
興味がある方はぜひ一度行ってみてください。
まとめ
今回は大学図書館について紹介しました。
大学にもよりますが、大学図書館の一般人の利用については、資料の閲覧のみ許可されている場合や、大学のある地域の住民にのみ利用が許可されている場合が多く、自習目的での座席利用に関しては許可されていない大学もあります。
大学図書館はあくまでも所属する学生や教員のための施設ですので、使用する際はそのことを念頭に置いて使用しましょう。
制限はかかりますが、大学の図書館はそこにしかない貴重な資料の宝庫です。
必要な資料がある場合は、積極的に利用してみましょう。