
「勉強を頑張りたいのに集中できない…」
「テスト前で寝不足なので何か対策をしたい…」
「仮眠を取った方がいいって聞くけど、本当に効果があるの?」
と悩んでいる受験生、高校生の皆さんに朗報です。
ここ数年、勉強のパフォーマンスを上げる方法として、「パワーナップ」が注目されています。
「パワーナップ」とは日中に15〜20分程度の短い仮眠・昼寝を取ることで、それだけで疲労回復や集中力アップにつながるため、気軽に取り入れやすいと話題です。
この記事では、パワーナップの効果や注意点、効果的なやり方についてご紹介していきます。
勉強効率を上げるアプローチ策はいくつかありますが、「パワーナップ」は比較的簡単にできるものなので、ぜひ試してみましょう。
パワーナップとは

パワーナップとは、一般的には15〜20分程度の短い仮眠のことを指します。
1998年に米国・コーネル大学の社会心理学者ジェームス・マースが提唱したもので、パワーアップ(“power up”)と、昼寝やうたた寝を意味する“nap”を掛け合わせた造語です。
GoogleやApple、Microsoftなどの有名外資系企業でも取り入れられ、NASAの睡眠研究では、認知能力や注意力が上がったという結果も報告されています。
また、日本でも「パワーナップ」を取り入れる企業が増えており、三菱地所では仮眠室の設置による、仮眠の効果検証実験も行なわれました。その結果、対象者のうち3分の2が「仕事効率が良くなった」と回答しています。
豆知識:シエスタとの違い
海外でよく導入されている「シエスタ」も、昼寝という点では似ているものになります。シエスタは、スペイン語で「昼寝」の意味で、13:00~16:00の間に取る長めの昼休憩を指します。仕事を休む時間という意味合いで導入されているため、昼寝をしていなくてもシエスタと呼ばれています。
参考:NASAも認める「昼寝」の驚くべき効果 | 朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」 | ダイヤモンド・オンライン
三菱地所との「仮眠室を活用した仮眠効果検証実験」結果報告 仮眠を活用することで日中の集中力向上と眠気低減を計測データで確認
パワーナップの3つの効果

パワーナップの効果として、主に以下の3つが挙げられます。
- 認知能力 / 注意力アップ
- 夜の睡眠より効果3倍
- 健康になる
それぞれについて詳しくご紹介していきます。
認知能力 / 注意力アップ
NASAが1995年頃から行なった”NASA Naps”と呼ばれる睡眠研究では、パイロットを被験者として、仮眠をした群と仮眠をしなかった群を比較したところ、昼に26分間の仮眠をとることで、認知能力が34%・注意力が54%も向上したという結果が出ています。
認知能力とは、一般に情報を正しく理解・判断する処理能力のことです。認知能力も注意力も、勉強において重要であることは言うまでもありません。
また、特に空腹が満たされたあとは、血流が消化器官に集中し、脳も休憩モードに入ってしまいます。そこで無理に勉強をしようとしても集中できません。そこで、積極的にパワーナップを取り身体を動かさないことで、消化を促進することができます。
起きた後は脳や身体に血流が戻ってくるため、より勉強に集中しやすいコンディションが整うでしょう。
参考:
・Effects of planned cockpit rest on crew performance and alertness in long-haul operations – NASA Technical Reports Server (NTRS)
・NASAも認める「昼寝」の驚くべき効果 | 朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」 | ダイヤモンド・オンライン
・脳が働く最強の時間帯は2つある【書籍オンライン編集部セレクション】 | 脳にまかせる勉強法
・【完全版】仮眠で集中力・想像力が向上!正しい「パワーナップ」方法を解説! – スタディノオト〜Study Note〜
夜の睡眠より効果3倍
受験勉強は、どれだけしても不安になってしまいます。そのため、つい徹夜をしたり、必要以上に勉強時間を確保したりと睡眠不足になることも多いでしょう。
私自身もテスト前に「追い込みだ!」と遅くまで勉強をしてしまい、寝不足で全く成果を出せなかったことも多々あります。
それでも、「不安だから睡眠時間を削ってでも勉強をしたい」という方もいると思います。
そんな方は昼間に短時間のパワーナップ(仮眠)をいれることで、睡眠不足によるローパフォーマンスを解消できるかもしれません。
実際、昼の仮眠は、睡眠時間の長さを考慮すると、夜の睡眠の3倍ほどの効果があるといわれているそうです。
入眠時にはノンレム睡眠(深い眠り)というのが訪れるのですが、ノンレム睡眠は深さに応じてステージ4まであります。カリフォルニア大学の神経科学者マシュー・ウォーカー氏の研究では「入眠20分ほどで訪れる軽い睡眠のステージ2では、脳内の“キャッシュ・メモリ”がクリアされ、情報を整理・記憶したり、優先順位をつける脳のワーキングメモリが強化される」ということが明らかになっており、短時間の仮眠でも効果があるのです。
夜の睡眠が十分にとれない人ほど、昼のパワーナップをとることをオススメします。
参考:パワーナップ(積極的仮眠)で人生のパフォーマンスが上がる | フィリップス
健康になる
昼の仮眠は、健康にも良い影響を与えるという実験結果も出ています。
2007年、ギリシャ・アテネ大学のデミトリオス・トリホプロス博士は「シエスタと心臓病との関係性」について調査をしました。その結果、ギリシャの成人を対象として、“30分間の昼寝を週3回以上すると心臓病死のリスクが37%低下”することがわかりました。また、仮眠をとることで血圧が下がるため、高血圧にも効果があり、心臓病だけでなく、脳梗塞や糖尿病の防止効果もあるといわれています。
受験勉強は長期戦になるため、体力が必要になります。受験当日はもちろん、受験期間に体調を崩してしまうと勉強時間が減ってしまいます。たまには勉強にかける時間を仮眠に費やし、健康に過ごすことでかえって勉強時間を伸ばすことができるかもしれません。
参考:
・https://diamond.jp/articles/-/112221?page=2
・坪田聡著/2015年/パワーナップ仮眠法/フォレスト出版
パワーナップのやり方

ここまでご紹介したようにぜひオススメしたいパワーナップですが、実施する際にはいくつかのポイントがあります。
より効果を上げるための以下の点を意識してみましょう。
- 仮眠時間
- 仮眠場所
- アイテム
- パワーナップ後はストレッチ
それぞれについて詳しくご紹介していきます。
効率を上げる仮眠時間
仮眠が30分以上になると深い眠りであるステージ3・4へと進み、寝覚めが悪くなり、起きてからも脳がボーっとした状態になります。
そのため、パワーナップは15〜20分ほどで短時間で済ませることが大切なポイントです。
効率を上げる仮眠場所
仮眠する際には、深く眠りすぎないようにすることが大切です。そのためには、椅子に座った状態や机に突っ伏した姿勢がオススメです。首にある交感神経節がほどよく刺激されるため、起きやすくなります。
また、「ホワイトノイズ」と呼ばれる、雨や風、波の音のような心地よい雑音があると、脳の活動が抑えられ眠りを促すといわれています。塾や学校などの騒がしい場所で仮眠をする際には、ホワイトノイズを聴けるアプリや動画などを用意するとよいでしょう。
参考:パワーナップ(積極的仮眠)で人生のパフォーマンスが上がる | フィリップス
効率を上げるアイテム
パワーナップの効率を上げるアイテムをいくつかご紹介します。
アイマスク
電気を消すことができればよいですが、塾や学校などどうしても明るい場所で仮眠を取ることもあると思います。明るさを感じるとメラトニンの分泌が減り、覚醒状態が続くため睡眠の質が下がります。その際には、アイマスクを付けるだけでも、睡眠モードに入りやすくなります。
参考:「アイマスクをつけて寝ると、こんな効果が!」……記憶力や注意力が高まる、との研究結果
アラーム
短時間で起きられるよう必ずアラームを設定しましょう。アラーム機能がついていればツールは何でも構いませんが、オススメはキッチンタイマーです。スマートフォンだとついほかのアプリを見てしまったり、仮眠中にも気になったりしてしまいます。
また、スマートフォンから発せられる電磁波は、脳を活性化させます。仮眠時に近くにあるとリラックス状態に入れないため、脳の休息を邪魔してしまいます。キッチンタイマーであれば、電磁波も発しておらず、仮眠を妨げることなく使えます。
しかし、塾や学校など周りの人の騒音になってしまう場所では、キッチンタイマーなどは使いにくいかもしれません。そのような場合は、苦肉の策かもしれませんが、スマートフォンのバイブレーション機能を活用したり、イヤホンにアラーム音が鳴らせるアプリを利用したりしましょう。
参考:寝るときにスマホのタイマーをセットしてベッドに置いている人は必見! 「見えない電磁波」があなたの脳波を乱す
コーヒー
カフェインを含むコーヒーや紅茶を仮眠前に飲んでおくと、寝起きがスッキリします。カフェインの覚醒効果が現れるまで20〜30分ほどかかるため、パワーナップをする直前に飲むことで脳が覚醒し起きやすくなります。
カフェインが含まれる飲み物としては、コーヒー、紅茶、煎茶、ほうじ茶、ウーロン茶、コカ・コーラ、エナジードリンク、ココアなどが挙げられます。
一方、糖が多く含まれているものを飲み血糖値が急激に上がると、インスリンが大量に分泌され、反動で血糖値が急降下します。今度は低血糖状態になり、強い倦怠感を感じたり、イライラしやすくなったりします。仮眠後にスッキリ起きるためにも糖が入っていないコーヒーやお茶系(ほうじ茶・ウーロン茶・紅茶・煎茶)を飲むようにしましょう。
参考:集中力アップや仮眠の際にも有効なカフェインとの正しい付き合い方
枕
最近では「パワーナップピロー」と呼ばれる商品が人気で、机に突っ伏して寝る用に特化した形の枕が販売されています。
- 首や頸椎への負担を減少
- 顔を覆うことで周りに寝顔を見られない
- 通気性・吸着能力に優れた素材であれば、菌の繁殖やニオイが気にならない(うつ伏せで仮眠する際ニオイが気になる人にとっては嬉しいですね)
といった効果が期待できます。
持ち運びできるサイズのものもあるため、塾などの外出先でも使用できます。
参考:「仮眠用枕」おすすめ5選 オフィスや自宅のデスクでも快適に昼寝を スッキリした頭で仕事の効率もアップ【2022年12月版】(要約) – Fav-Log by ITmedia
パワーナップ後はストレッチ
短時間の仮眠でも身体や脳は“休みモード”になっています。
パワーナップ後にできるだけ素早く“活動モード”に切り替えるためには、血流を良くすることが重要です。立ち上がって歩いたり、大きく伸びをしてストレッチをしたりしながら、血の巡りを意識してスイッチオンにしていきましょう。
それ以外にも、2000ルクス以上の光に当たると脳が覚醒するとされているため、太陽の光を浴びることもオススメです。
参考:昼寝の効果的な取り方とは?昼寝に適した睡眠時間やコツを解説
パワーナップをする際の3つの注意点

パワーナップで注意すべき点は、主に以下の3つになります。
- 寝すぎると逆効果
- 時間帯に気を付ける
- 個人差がある
それぞれについて詳しくご紹介していきます。
寝すぎると逆効果
「寝すぎたなぁ」というときは、集中力が上がらずなかなか勉強が進まないという経験を誰でもしたことがあるのではないでしょうか。
先に「入眠時20分ほどに訪れるノンレム睡眠・ステージ2で脳が整理されスッキリする」とお伝えしました。しかし、仮眠が30分以上になるとステージ3-4へと進み、深い眠りに入ってしまいます。すると、寝覚めが悪くなり、起きてからも脳がボーっとした状態になります。
仮眠する時間を決めて、寝すぎることがないように注意しましょう。
参考:パワーナップ(積極的仮眠)で人生のパフォーマンスが上がる | フィリップス
時間帯に気を付ける
テスト前など朝から勉強に集中していたら、いつの間にか夕方になっていた。一旦休憩と思ってうっかり寝てしまい気付いたら夜。そのせいで夜寝付こうとすると全く眠くならない。そんな失敗をしたことがある人もいると思います。
東京足立病院・内山真院長が監修した調査によると「睡眠と体温」には深い関係があり、「特定の皮膚部位から熱を外界に逃がすことで体の内部の温度を下げ、脳温も下がって眠りに入る」ことが分かっています。また、睡眠時は身体を動かさないため、体温は下がっていきより深い眠りに入っていきます。
通常であれば、日中に上がった体温が夜にかけて徐々に下がっていくことで眠る準備が整っていきます。しかし、夕方に眠ってしまうことで一度体温が下がり、そこからまた体温が上がるため、身体も脳も活性化してしまうのです。
夜中まで活性化した状態が続くと、睡眠不足による翌日の悪影響を否定できません。次の日もパフォーマンス高く活動できるように、身体のリズムに合わせた生活を心がけましょう。
そのため、仮眠を取る場合には夕方〜夜は避けるようにしましょう。
参考:https://www.terumo-taion.jp/health/sleep/article01.html
個人差がある
何時間寝たときが一番寝起きがよいでしょうか。適切な睡眠時間は、成人で6〜8時間とされていますが、個人差もあります。厚生労働省が2019年に行った「国民栄養・健康調査」では、成人の7割近くが7時間未満の睡眠時間・40代の成人男性においては半数近くが6時間未満であることが分かっています。
同じように、パワーナップの一般的な適正時間は15〜20分といわれていますが、適切な時間は人それぞれ異なります。実際に何度か試しながら自分にとって最も効果的な時間ややり方・アイテムを探ってみてください。習慣化していくことでより身体に馴染んでいきますので、まずは2〜3週間試してみましょう。
参考:昼寝が効率的?!積極的仮眠、『パワーナップ』でパフォーマンスをあげよう 1/2 » イノバエルダ:InnovaEldar
まとめ
今回は、勉強の効率を上げるための「パワーナップ」について解説しました。
パワーナップは、15〜20分という短時間の仮眠にも関わらず、集中力や記憶力のアップ・健康への好影響など大きなメリットが得られます。一方、寝すぎない・時間帯に気を付けるなどの注意点を意識しなければ、かえって効率が悪くなってしまうこともあります。
大切なことは、勉強の効率を上げるために「自分にはどんな方法が合うのか」を知ることです。
今回ご紹介した「パワーナップ(仮眠)」以外にも、勉強の効率を上げる方法はたくさんあります。勉強する環境を変えたり、時間帯を調整してみたり、適度に運動をしてみるのもオススメです。がむしゃらに勉強に取り組むだけではなく、自身の生活やスタイルを見直してより効率よく合格に近づけるように調べて実践していきましょう。