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就職が難しい?博士課程について徹底解説!

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就職が難しい?博士課程について徹底解説!

大学の学部を卒業すると、大学院の修士課程、さらには博士課程に進学できることを知っている人は多いでしょう。

しかし、

「修士課程よりもさらにレベルアップしている博士課程ではどんなことを勉強するのだろう?」

「博士号を取得するとどんな就職先があるんだろう?どれくらい就職で有利になるんだろう?」

と気になっている人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、大学院の博士課程についての概要や就職事情について詳しく解説します。

博士号を取得したい、研究者として活躍したいと希望している人にとっては必見の内容なので、最後までチェックしてください。

博士課程とは

博士課程とは

博士課程は、大学院の最高学位プログラムであり、専門的な研究能力や深い専門知識を身につけることを目指しています。
一般的に修士課程を修了した後に進学することが多く、3年から5年ほどの期間を要します。
博士号(Ph.D.)の取得が最終目標とされており、学際的な研究や独自の学問的貢献を目指します。

博士課程では、専門分野における深い理論的背景の学習とともに、独自の研究プロジェクトの遂行が求められます。
これには文献レビューから研究設計、データ収集、解析、論文執筆に至るまでの一連のプロセスが含まれます。
また、国内外の学会への参加や、学術雑誌への論文投稿も重要です。

博士課程と修士課程との主な違いは、研究の深さと自立性にあります。
修士課程では指導教員の下で研究が進められることが多いのに対し、博士課程では学生自身が研究の主体となり、よりオリジナリティのある学問的貢献を求められます。
さらに、博士課程に属する学生の研究は、その研究成果が新たな学問領域の開拓につながる可能性も秘めています。

日本における博士課程への進学率は比較的低い傾向にあります。
2022年に文部科学省が発表した学校基本調査によると、修士過程から博士課程への進学率は10.3%とされています。

海外と比較してみると、2019年の人口100万人あたりの博士号取得者はドイツやイギリスなどの先進国が300人を超えていることに対し、日本は100人を超える程度であり、半分以下であることがわかります。

修士過程への進学者が、学部卒業生の12.4%であることを踏まえると、学部卒業生のうち、博士課程へ進学する割合は約1.2%と、かなり低くなります。

「また、修士課程については、こちらの記事で詳しく紹介しているので、そちらをチェックしてください。」

参考:3.4学位取得者の国際比較

参考:「大学院進学」の減少が止まらないこれだけの理由 進学希望は多い一方アカハラや学費等の悩みも | 理想と現実 大学院生の苦悩 | 東洋経済オンライン

博士課程に進学・卒業するには?

博士課程に進学・卒業するには?

博士課程に進学するためには、まずは適切な大学や研究プログラムを選択することが重要です。

たいてい、博士課程の学生は修士課程を卒業し、関連する分野での研究経験を有している必要があります。
入学のための具体的要件には、該当分野における修士学位の取得、推薦状、研究提案書、場合によってはTOEFLやTOEICなどの英語資格試験のスコアが必要となることもあります。
また、入学前に指導教員との面接が行われることも一般的です。

博士課程の勉強は、修士課程と比較してもはるかに自己主導型であり、研究によっては長時間の実験やフィールドワークが求められることもあります。
実際の勉強時間は研究テーマや実験の性質にも左右されますが、週に40時間以上を研究に費やすことは珍しくありません。
理論的な研究や文献研究も含め、非常に高いレベルの内容理解と分析が求められるため、博士課程修了の難易度は高いです。

博士課程の最終目標は、自己の研究プロジェクトに関する学位論文を完成および公開し、博士号を取得することです。
卒業要件はプログラムによって異なりますが、通常、数年間にわたる研究活動の成果をまとめ、それを論文として提出し、学位審査委員会の前でその成果を発表します。
このプロセスには、研究の計画、データの収集と分析、結果の解釈、そして論文の執筆が含まれます。
また、博士課程は最短3年で修了できます。
しかし、令和3年度の文部科学省の調査によると、3年で博士課程を卒業できている人は39.5%であり、決して多くありません。

修士課程は、学部生と同じで単位を習得しつつ、修士論文を執筆することで修士号を獲得し、卒業という流れになります。

しかし、博士課程は単位の取得を目的としているわけではありません。
自ら研究テーマを確立し研究を進め、成果を上げる必要があります。
そのため、修士課程と博士課程は卒業の難易度が大きく異なります。

修士課程は2年でそのまま卒業する人が多いですが、博士課程の場合は3年以上在籍している人が多いことも考えると、その難易度の違いがわかるでしょう。

参考:博士号って何歳で取れる?大学院ストレート修了時の年齢【入学に制限はない】

博士号取得のメリット

博士号取得のメリット

博士号を取得することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

ここでは、博士号を取得するメリットを3つ紹介します。

ここで紹介するメリットは以下の3つです。

  • 専門知識をより深く身につけられる
  • 研究能力の向上
  • キャリアの選択肢拡大

専門知識をより深く身につけられる

博士課程では、特定の分野について高度な研究を行います。
これにより、その分野における専門知識が深く、広がりを持つことができます。
この深い知識は、研究機関、大学、さらには業界でも非常に価値が高く評価されます。
専門知識の深化は、新しいアイディアやイノベーションを生み出す起点となり、問題解決能力の向上にも直結します。

博士課程では、学部や修士課程とは異なり、自分で研究内容を確立して自主的に研究を深める必要があります。
そのため、さらに深く研究分野について知り尽くせるようになり、より深く専門知識が身につけられるようになるのです。

研究能力の向上

博士課程の学生は、厳しい研究プロセスを経験することで、高度な研究スキルを身に着けます。
これには、問題の識別、仮説の設定、データ収集と分析、そして結果の解釈と発表が含まれます。
これらのスキルは、学術界だけでなく、多くの職種で求められ、博士課程の修了者が他の人材と差別化できる重要な要素です。

特に博士課程では、修士過程とは異なり「自分で研究内容を確立して自立的に研究を進める」必要があるため、学部卒や修士卒の人間が持っていない研究能力・問題解決能力が身に付きます。

これは、博士課程ならではの大きなメリットといえるでしょう。

キャリアの選択肢拡大

博士号を持つことは、アカデミア(大学教員や研究員)や研究職において、キャリアの拡大に寄与してくれます。
他にも、研究開発部門や政策立案、高度なテクニカルアドバイザーなどの職に就く際、博士号は強力な資格となります。
また、博士号は国際的にも認知されているため、グローバルなキャリアを追求する選択肢も増えます。

特に大学教員になりたいと考えている場合は、博士号の取得は基本的に必須要件とされています。
そのため「大学教授になって研究と教育を両立させて活躍したい」と考えている人にとっては、博士号取得は夢を実現するための必須要件であるといえます。

国際的な研究者として活躍したいと考えている場合には、博士号の取得は大いに役立ちます。
自分の経歴にPh.Dの称号が付いているだけで、海外の研究者からある程度注目されることが多いためです。

博士号取得のデメリット

博士号取得のデメリット

博士号取得には上記のようなメリットがある一方で、デメリットも存在します。

ここでは、博士号を取得することで発生するデメリットを3つ紹介します。

紹介するデメリットは以下の通りです。

  • 長い時間と高いコスト
  • 就職活動で特別有利になるわけではない
  • 心理的・社会的なプレッシャー

長い時間と高いコスト

博士課程は一般的に3年から5年、場合によってはそれ以上の時間を要します。
この長期間、学生は専門研究に専念しなければならず、アルバイトで長時間働くことが困難になることが多いです。

加えて、奨学金が得られない場合、授業料や生活費で高額の出費が必要です。
これは金銭的な負担が大きく、経済的な自立が遅れる原因となります。

博士課程の学費は、国公立大学の場合だと入学料が約300,000円、年間の授業料が約500,000円かかります。

例えば東京大学だと、入学料が282,000円、年間の授業料が580,200円かかります。
もし3年間在籍した場合、合計で2,022,600円の学費が必要になります。

博士課程をこなすには、3年〜5年の時間と2,000,000円前後のお金を費やす必要があります。
博士課程に進学したいと希望している人は、そのことを必ず覚えておきましょう。

就職活動で特別有利になるわけではない

博士号は学問の世界で高く評価されますが、就職においてはそれが直接的な利点になるとは限りません。
博士号を取得するほどの高度な研究能力や知識が必要とされていない分野では、そこまで魅力的な資格だとみなされない場合があります。

もちろん、博士号が高いレベルの研究能力や思考力を有していると証明していることは間違いありません。

しかし、そのレベルの研究能力や思考力は必要ではないと考えている一般企業もなかにはあります。

そのため、博士号を取得したとしても、必ず一般企業での就職活動で有利になるわけではないということを理解しておきましょう。

心理的・社会的なプレッシャー

博士課程は研究に必要な備品や研究費などの競争が非常に激しく、常に高いパフォーマンスが求められます。
長時間にわたる研究や学問的圧力は精神的なストレスにつながることがあり、これが原因で学生は社会的孤立を感じることがあります。

また、同年代の友人が社会人としてキャリアを築いていくなか、学生生活を続けることに対して焦りや劣等感を感じることもあるでしょう。

他にも、博士号を取得したとしても、研究資金の問題や大学に空いているポストの問題から、アカデミックに残るのは難しいです。

そのため、このような観点からも、プレッシャーを感じる可能性があることを理解しておく必要があります。

これらのデメリットは、博士課程に進む前に十分に考慮し、自身のキャリアプランと照らし合わせて検討することが重要です。
博士課程が自己実現のためのステップとなるか、それともキャリアの障壁となるかは、その人の状況や目指す職業に大きく依存します。

博士号取得後の進路

博士号取得後の進路

内閣府が発表している「博士後期課程修了者の進路について」によると、博士課程取得後の進路は「民間企業・公的機関」「ポストドクター」「大学等教員」の3つに分けられています。

ここでは、それぞれの進路について詳しく紹介します。

(上記には「博士後期課程」という表現がありますが、一般的には「博士後期課程=博士課程」「博士前期課程=修士課程」とされています。)

民間企業・公的機関

博士号を持つ人の専門知識や研究スキルは、民間企業や公的機関においても高く評価されることが多いです。

技術系の企業、たとえば製薬会社、エネルギー会社、あるいはIT関連の企業などでは、研究開発部門でのキャリアをスタートすることが考えられます。
また、政策策定やデータ分析のスペシャリストとして政府機関や国際機関で活躍する道もあります。

特に博士課程の研究は、問題解決能力や批判的思考能力、プロジェクトマネージメントの技術など、ビジネス世界でも非常に重宝されるスキルを育成します。

そのため、博士課程を修了することは、研究職だけでなく多種多様な職種で強みをもたらす可能性があります。

ポストドクター

研究職においてさらなる専門性や研究成果を積み上げたい場合、ポストドクターとしてのキャリアを選ぶことは一般的な進路の一つです。
ポストドクターは、通常、大学や研究機関において、一定期間、特定の研究プロジェクトに取り組むポジションです。
これには、更なる研究能力の向上はもちろん、研究チームでの協働、さらには独立した研究者としての業績を築くための機会が含まれます。

ポスドクは、将来的にアカデミックな職を目指すうえで重要なステップであり、研究者としての実績を積み重ねるために役立ちます。

しかし、ポスドクには「ポスドク問題」と呼ばれる問題があります。
これは、ポスドクとしての任期を修了したのにもかかわらず大学に助教授としてのポストがなく、他の大学のポスドクを転々とすることになってしまう問題です。

そのため、ポスドクとして任期を満了しても、助教授としてキャリアアップできるかどうかはわからないことを把握しておく必要があります。

大学等教員

博士号取得者の中で特に研究に情熱を持っている人は、大学などの高等教育機関での教員職を選ぶことがあります。
大学教員としては、自らの研究をさらに深めるとともに、学生の指導にも関与します。
このキャリア展開は、研究と教育の両方に深く関わりたいと望む博士課程卒業生に最適です。

教員としてのポジションは非常に競争が激しいものの、自己の研究領域を掘り下げ、学生たちの指導を行い、学問の発展に寄与する大きな魅力と満足感を与えてくれる職業です。

博士課程を修了した後のキャリアは多様であり、選択肢は決して限られていません。
専門知識を生かし、自分に合った道を選ぶことが重要です。

参考:博士後期課程修了者の進路について

まとめ

この記事では、大学院の博士課程について、その概要や就職事情について紹介しました。

博士課程は、莫大な時間とコストがかかりますが、その分深い知識が身に付き、研究能力が向上したり、学部卒や修士卒では実現できない進路に進めます。

しかし、上記の通り時間とコストがかかることや、一般企業における就職活動では特別有利に働く可能性が低いことなど、デメリットもあります。

また、博士号取得後の進路としては「民間企業・公的機関」「ポストドクター」「大学等教員」の3つが挙げられます。
特に大学教員には、博士号の取得が基本的には必須とされているので、大学教授になりたい人は博士課程への進学を視野に入れましょう。

自分は本当に学問の研究をさらに深めたいのか、自分はどんな目的を持って博士課程に進みたいと考えているのかを改めて考え直し、博士課程への進学を目指すかどうか検討することが大切です。

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